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INFORMATION ニュース

1984.01.01

1984年(昭和59年) 活動51年目

お知らせ

大学リーグ、劇的試合が続く。甲子園ボウルは日大、関学大両校優勝

日 付 主な出来事
社  会 6月 日本人の平均寿命世界一へ
7月28日 第23回夏季オリンピック・ロサンゼルス大会開幕、共産圏不参加
フットボール 6月 NCAAルール委員会セクレタリ、ディビッド・ネルソン氏初来日。クリニック開催
9月1日 日本協会50周年史『限りなき前進』発行
12月4日 第1回西日本学生王座決定戦、西南学院大-広島大(九州大学貝塚グラウンド)
12月9日 第39回甲子園ボウル、日大、関学大引き分けで両校優勝。ライスボウルは抽選で日大出場
12月16日 東海連盟、学生-社会人選抜対抗戦第1回名古屋ボウル開催(名古屋鶴舞陸上競技場)
翌年1月3日 第38回ライスボウル、日大、レナウンを下し初優勝
翌年1月13日 第34回神戸ボウル、この年から全日本社会人選手権として開催
翌年2月5日 日本アメリカンフットボール50周年祝賀会。8人に功労賞(東京アメリカンクラブ)

日本フットボール誕生50周年を迎えた1984年度も終わりに近い85年2月5日、東京都港区の東京アメリカンクラブに内外関係者531人を集めて、日本協会主催の「50周年記念祝賀会」が開催された。草創期の功労者の表彰や多くの来賓の祝辞で盛り上がりを見せ、「限りなき前進」を合言葉に高校、大学、社会人フットボールの今後の一致団結を誓い合う貴重な場となった。

[1]主な出来事

●日本アメリカンフットボール50年記念式典では以下の方々や組織に表彰などが行われた。

 

日本アメリカンフットボール五十周年記念として(1985年2月5日、東京アメリカンクラブ)

氏 名 肩 書
功労賞 小川 徳治氏 元日本協会理事長
原田 嘉兵衛氏 元日本協会理事長
服部 慎吾氏 元日本協会理事長
花岡 惇氏 元明治大監督
井上 素行氏 元関東協会会長
浜本 正吉氏 関西協会会長
竹下 正晃氏 元明治大監督
葉室 鐵夫氏 元毎日新聞社記者
社名・団体名
感謝状 日本運動記者クラブ

アメリカンフットボール分科会

国立霞ヶ丘競技場
東京駒沢オリンピック公園
大井埠頭中央海浜公園
横浜スタジアム
後楽園スタジアム
阪神甲子園球場
阪急西宮球技場
(株)青光社
タッチダウン(株)

●9月1日、日本協会50周年史『限りなき前進』(発行:日本協会、編集:タッチダウン株式会社)が発行された。全216頁。協会関係者の挨拶と各界からの祝辞に続いて、各年のフットボールの活動、フットボール創成期の記録、この年の日本協会加盟各大学の公式ユニフォームとチーム紹介、各年の試合結果などが掲載された。

 

[2]競技施設・装具・公式規則

◆公式規則変更

6月、日本の競技規則が準拠するNCAAのフットボール規則を制定するNCAA FOOTBALL RULES COMMITTEEのセクレタリであるDavid M.Nelson氏が日本協会の招きで来日。関東、関西の審判組織へのクリニックの開催や日本協会関係者との会合など、精力的に活動した。

同氏は、米国NCAA RULES COMMITTEEで中心的な役割を担い、長い歴史を持つNCAAフットボールの競技規則を時代、社会、技術の変化・進展に伴い、適切に変更を重ねてきたキーマンだった。セクレタリは、委員会の審議の進行を司どるチェアマンの下で、実質的な変更案の策定と、審議内容を公式規則の各条文と照らし合わせながら条文を作成する要職で、同氏は1962年から永眠する91年まで務めた。反則の少ない日本のフットボールは、カレッジフットボールの原点にも通じると、日本のフットボールを支援した。

同氏は1989年に2回目の来日。やはり、日本でのNCAAフットボールの公式規則に関するクリニックを開催した。同氏の計らいで85年から、毎年1、2月に開催するNCAAの公式規則変更を審議する「THE NCAA FOOTBALL RULES COMMITTEE MEETING」に日本からも出席が可能となり、2005年まで21年間、日本の競技規則委員会から2人が出席した。その会議では冒頭の出席者紹介で、日本からの出席者が日本のフットボールの現状を紹介した。日本からの出席者も、公式規則変更の賛否への予備投票の投票権が与えられた。

 

【この年の日本の主な規則変更】

特になし

 

[3]春季試合

◆春のボウルゲーム

●第30回西日本大会

「第30回西日本大会」では関学大が大体大に13-18で敗れ、5月20日の決勝はその大体大とブラックイーグルスの対戦となった。ブラックイーグルスがRB板倉毅の2つのTDで先行し、大体大もTDパスで追い掛け、前半はブラックイーグルスが13-7とリードして折り返す。後半もブラックイーグルスのラインが相手を圧倒し、3TDを挙げて39-13で快勝。これで社会人チームの西日本大会制覇は3年連続7回目となった。社会人チームの実力の向上がはっきりとしてきた。

●第30回西宮ボウル

50周年を迎えて活気に満ちあふれる中、春季恒例の「第30回東西大学選抜戦・西宮ボウル」が6月21日に西宮球場で開催された。関東選抜が40-21で記念すべき第30回大会に勝ち、対戦成績を17勝12敗1分とした。

●第9回パールボウル

「第9回パールボウル」は6月15日、後楽園球場で日大とレナウンの対戦で開催。日大が21-17で接戦を制した。日大の勝利だったが、「日本選手権」のライスボウルで京大に健闘したレナウンがQB鈴木隆之、RB川田治毅、DT原田勧慈、3インターセプト奪取のDB黒田祐介の活躍で善戦した。

「パールボウル」は第1回大会から大学チームと実業団チームの対戦だったが、翌1985年から実業団チーム間の対戦となるため、この回が大学チーム出場の最後の年となった。結果は大学チームの9戦全勝だったが、この間の社会人チームの実力向上に大きな役割を果たした。

 

[4]秋季試合

◆秋季試合(学生)

■関東(学生)

●関東大学リーグは日大が24回目の優勝を遂げたが、日体大が大健闘した。1部はほとんどの試合を駒沢第二球技場と駒沢補助競技場で開催。新時代の幕開けにふさわしく、秋の大学リーグは戦国時代の様相を呈した。

Aブロックは日大の平均得点が50点を割る44点で、慶大と明大に各2TD、東海大にも1TDを許した。攻撃は2人のQBを配置したショットガン体型から、QB松岡秀樹(四年)にすべてを託す従来の体型に戻したが、主力となるレシーバーの不在から得点能力は大幅にダウンし、リーグ戦5試合の総得点は222点と減少した。それでも、要所での松岡のランとパスは効果を見せ、SB山田幸広(四年)、WR飯伏敏文(三年)らのレシーバー陣も奮起し、ブロック4連覇を達成した。明大が2位に浮上したが、日大と立大に敗れて3勝2敗。新人QB渡辺弘幸を抜擢した伝統のオプション復活も今一歩に終わった。東海大は終盤戦に慶大と立大を下し、同じく3勝2敗で4年ぶりに勝ち越して3位と健闘した。前年2位の慶大はディフェンス陣が頑張ったが、新規導入のショットガン攻撃に決定力がなく、4位に甘んじた。

Bブロックでは日体大の健闘が光った。スタートメンバー24人中四年生が6人の若いチームながら、藤野雅博新監督が見事なチームづくりをみせた。若い攻守ラインの豊富な運動量を、攻撃ではQB高橋宏昭(四年)、FB宮下清久(四年)、QB大山茂(四年)、守備ではLB兼安祥二(四年、主将)といった上級生が支え、科学的な基礎体力の養成や相手チームの分析研究にも熱心に取り組み、ブロック4連覇を達成した。

専大が4勝1敗で前年の3位から2位へ躍進。攻・守・蹴すべてが洗練され、QB香山厚成(四年)、WR山下篤(四年)、T飯原慶成(四年、主将)と好選手にも恵まれ、あと一歩に迫った。

ブロックが変わった法大は優勝候補と見られたが、TE軽部宏(四年、主将)、T若菜和法(四年)、RB白石直之(四年)といった大型選手を生かせず、日体大と専大に敗れて3勝2敗で3位。前年2位の早大は、得意のパス攻撃の効果が今一つで、1勝3敗1分で4位に後退した。

●第15回関東大学選手権

「第15回関東大学選手権・パルサーボウル」は5年連続で日大-日体大となり、初冬の陽光が射す横浜スタジアムで開催。日体大は1Q早々、FB宮下清久(四年)の54ヤードランで先制。日大も7分、QB松岡秀樹(四年)からFL細谷隆(四年)へのTDパスで同点に追い付くと、そこからは両チームの攻撃陣の活躍で、激しい点の取り合いとなった。

前半は日大が4TD、日体大がインターセプトリターンTDを含む3TD、1FG。後半は日大が5TD、日体大が3TDで、日大が63-51で激戦を制した。日大QB松岡秀樹は8TDパス、日体大QB高橋宏昭(四年)も3TDパスを決めた。

 

■関西(学生)

●関西学生リーグはほとんどの試合を西宮球技場で開催。波乱のシーズンとなった。前年、日本の王座に就いた京大が、開幕戦で前年最下位の立命大と0-0で引き分けた。また、大体大に敗れていた近大が、中盤戦で強豪中の強豪の関学大と京大を連破。第4週の終了時点で全勝は大体大だけとなり、優勝争いは関学大、近大、大体大、京大が並ぶ激しい展開となった。

終盤戦に入り、大型新人QB東海辰弥を核とする再建途上の京大が、QB前田正久(三年)、RB住田徹(四年)ら好選手を揃えた大体大に守り勝ち、まず大体大が優勝戦線から脱落。最終戦で京大が開学大に敗れ、結局関学大と近大が6勝1敗で関西リーグ史上4回目の両校優勝となった。甲子園ボウル出場を懸けた4年ぶりのプレーオフが、11月25日に神戸総合陸上競技場で行われた。

関学大は、開幕時にはQB芝川龍平(二年)のワンバックで、芝川の負傷後は竹田篤史(四年)、野村康平(一年)をQBに据えたプロIで臨み、終盤はQB縄船敏之(三年)のショットガンと、核となる攻撃を模索していた。一方、近大はQB森岡章(四年)、RB西口武(四年、主将)、TE佐野智(三年)、WR上田能敬(二年)、DT重久俊幸(四年)、DT権野勝(四年)ら好選手をそろえた実力派で、プレーオフにはショットガンを新たに採用した。

3Qまで両チーム無得点の息詰まる試合となった。4Q3分、近大がRB西口武(四年)のTDランで均衡を破ったが、その後関学大が逆転。しかし、近大が終了2秒前にQB森岡章(四年)からWR上田能敬(二年)へのTDパスで14-14の同点に持ち込み、リーグ史上初の延長戦(5、6Q)にもつれ込む大接戦となった。

関学大はQB縄船敏之の2TDパスなどで5Q終了時に30-21とリード。近大も6Q10分、QB森岡章からWR上田能敬にこの日3つ目となる62ヤードのTDパスを決め、2点差まで迫ったが試合終了。関学大が30-28で、3時間53分の激戦に勝利し、甲子園ボウル出場を果たした。

3位が大体大、4位が京大で、以下神戸大、立命大、同大の順。大市大は全敗で入れ替え戦にも敗れ、2部に降格した。

●近畿、東海、北陸リーグの覇者による関西学生リーグとの入れ替え戦出場チームを決定するトーナメントは9チームが参加。兵庫ブロックの岡山大と東海リーグの中京大の関西地区以外の2校が勝ち進み、関西学生リーグへの挑戦権を得た。

関西学生リーグとの入れ替え戦では、中京大は関西学生リーグ8位の大市大と対戦。最後の2点TFPを決め、22-21で劇的な逆転勝利を挙げて翌年の関西学生リーグ昇格を決めた。東海学生リーグから初の関西学生リーグ昇格となった。岡山大は関西リーグ7位だった同大に0-14で敗れ、昇格はならなかった。

 

■各地区(学生)

【北海道】 8月15日、石狩川を境に道内大学を東西に分けた大学の選抜戦、「円山ボウル」の第1回大会を開催した。札幌大、旭川大を中心とした東軍が37-6で勝利。秋の学生リーグ戦は札幌大、北大、旭川大の三つ巴の争いかと見られていたが、札幌大が全勝で初優勝した。また、10月7日に行われた「第11回ポテトボウル」はこれまで選抜チームが出場していたが、この年から大学-社会人のチャンピオンチーム同士の対戦となり、札幌大が社会人王者のリタイヤーズを13-8で破った。

【東北】 東北大と東北学院大の争いとなり、最終戦で東北大が東北学院大を13-0で破り、優勝した。

【東海】 1部は中京大、名古屋大、愛知学院大、岐阜歯科大、南山大、愛知大の6チームのリーグ戦で行われ、中京大が全試合圧勝で優勝した。東海地区の学生-社会人の選抜対抗戦、「第1回名古屋ボウル」が12月16日、鶴舞陸上競技場で開催。翌年関西学生リーグ昇格の中京大を中心とした学生選抜が社会人選抜を21-6で破った。

【北陸】 金沢大と福井大が3勝1敗となったが、直接対決の結果で金沢大が優勝した。混戦模様のリーグ戦だったが、大差の試合が多かった。

【中四国】 混戦が予想されたが、広島大が広島修道大に先制されながらも13-6で逆転勝ちし、以降は無難な試合運びで全勝優勝した。

【九州】西南学院大の守備陣が活躍し、5試合で2TDを許しただけで全勝優勝した。過去10年開催されてきた「平和台ボウル」が、この年から九州と中四国地区の学生王者の「西日本学生王座決定戦」として、12月16日に平和台球場で新たな「平和台ボウル」を開催。あいにくの雨中戦となったが、タフなグラウンド攻撃でわずかに上回った九州代表・西南学院大が23-19の接戦で広島大に勝利した。

【長野】 11月18日、この夏に長野・飯綱高原にフットボール専用合宿地を開設した長野協会の主催の「84善光寺ボウル」を長野市陸上競技場で開催。慶大と米軍横田レイダーズが対戦し、体格で勝るレイダーズが34-17で勝利した。

 

◆秋季試合(社会人)

■秋季試合 関東(社会人)

●東日本実業団リーグは各企業のグラウンドを使用。関東社会人リーグは前年に続いて米軍厚木フライヤーズが準加盟してオープン参加し、リーグ戦の全試合を米軍厚木基地のフィールドで開催した。関西社会人リーグは西宮球技場を主会場に尼崎陸上競技場などを使用した。

実業団の戦いは実力均衡で接戦が続いた。東日本1部リーグに加盟した三和銀行の動向が注目されたが、QB横瀬輝男、TE戸田光則の日大OBなど新戦力を中心に善戦したものの、レナウンと日産の二強の壁を破れず、オンワードと並んで3位に終わった。

前年、社会人の優勝を果たしたレナウンは序盤戦こそもたついたが、シーズンが進むとともに調子を上げ、宿敵・日産に41-14と完勝して関東2連覇。12月2日に大井陸上競技場で、苦しみながらも関西社会人5連覇を果たした松下電工と実業団日本一を争った。試合は、松下電工がベテランQB西村英男の活躍で先制したが、攻守に層の厚いレナウンが総合力で上回り逆転。後半はレナウンが守備の健闘もあって56-17と完勝し、2年連続で日本選手権に進出した。

関東社会人リーグは5チームが参加。最終節のシルバースターとシルバーオックスの全勝対決は、接戦の末に9-0でシルバースターが勝利し、優勝した。3位は東京グリーン・ホークス、以下ヨコハマハーバーズ、東京シャークスとなった。

 

[5]秋季試合(ボウルゲーム)

◆第39回甲子園ボウル

●「第39回甲子園ボウル」は12月9日、甲子園球場に史上最多の35,000人の観客を集め、日大と関学大の22回目の対決で開催された。日大は、その後も記録として残る関東代表として8年連続出場となった。関学大は一年生QB野村康平のオプションプレーやスピード豊かなワイドオープン攻撃で日大守備陣を振り回し、1Q10分、やはり1年のRB真弓英彦の4ヤードTDランで先制。その後も、この試合で最優秀攻撃ラインマンとなったC尾寺忠(四年、主将)のスナップを受けたQB松岡秀樹(四年)の活躍で追い付く日大をその都度突き放し、3Qまで関学大ペースで進んだ。

日大は4Qに入り、DT村井治彦(四年)、DT楢崎五郎(一年)ら関学大の動きに慣れた守備の頑張りで逆転したが、試合終了4秒前、関学大は交代したQB縄船敏之(三年)の20ヤードパスがカットされながらもWR菅野裕士(四年)の手に収まり2点差に。さらにQB野村がトライのランを成功させ、劇的な42-42の引き分けで、史上3度目の両校優勝となった。

九分九厘手にした単独優勝を、関学大の気力で逃した形の日大だったが、選手11人同士の抽選の結果、日本選手権の出場権を得た。最後にフィールドにいた両軍11人による11回のコイントスは8組が終了して関学大が5勝と、抽選勝ちまであと一人となったが、残りの3組がすべて日大の勝利となり、日大が6-5で勝利した。日大のQB松岡秀樹(四年)は56回パスを試みて39回成功、396ヤードを記録してミルズ杯を獲得した。

日大は2年ぶり17回目、関学大は7年ぶり16回目の優勝。両校の対戦成績は日大の14勝6敗2分となった。日大と関学大が初めて甲子園ボウルで顔を合わせて引き分けた1955年の第10回大会に選手としてともにプレーした日大・篠竹幹夫監督、関学大・木谷直行監督の30年目の対決は、またしても引き分けだった。

 

◆第38回ライスボウル

●「第38回ライスボウル」は翌1985年1月3日、国立競技場に35,000人の観客を集め、日大とレナウンの対戦で行われた。日大にとっては春季に21-17と辛勝した相手であり、シーズン後半の守備の乱れから勝負は互角と見られたが、この試合ではその守備が奮起。レナウンの好QB鈴木隆之のパスをわずか19%の成功率に抑え、攻めてはQB松岡秀樹(四年)のリズムあるパス攻撃がTE吉田忠義(四年)、佐藤秀彦(四年)、WR飯伏敏文(三年)に的確に決まった。さらに、主将C尾寺忠(四年)を中心とした堅実なラインがバックスを守り、53-21と完勝。日大のショットガン戦法が大差で勝利を収めた。

レナウンはショットガン攻撃からの脱皮を図り、RB川田治毅と山沢真樹の好走で健闘したが、守備の第二列が日大に走り負け、気力でも圧倒されて完敗。日大は安定した実力で8年連続で甲子園ボウルに出場し、1978年から82年に5連覇を飾った”真紅のフェニックス”としてアメリカンフットボールの象徴的な存在だったが、前年度の甲子園ボウルで京大に苦杯を喫し、記念すべき学生と社会人に対決になって初めての「日本選手権」の出場を逃していた。

それがこの年、持ち前の破壊力あるショットガン攻撃で、日本フットボール史に一時代を築いた名門が復活。篠竹幹夫監督念願の日本初王座に就いた。MVPのポール・ラッシュ杯は日大QB松岡秀樹(四年)が受賞した。

 

◆その他のボウルゲーム

●第2回カレッジボウル

「第2回カレッジ・シックボウル」は横浜スタジアムに舞台を移し、シーズン終了後の12月16日に開かれた。波乱のシーズンを象徴するような接戦の末、終了1分前にQB松岡秀樹(日大四年)のランで勝ち越した関東が45-35で2連勝。最優秀選手には2TDを挙げたRB宮下清久(日体大四年)が選ばれた。

●翌1985年1月13日、神戸中央球技場で社会人王者を決める「第34回神戸ボウル」を開催。関東社会人優勝のシルバースターと関西社会人優勝のブラックイーグルスが対戦した。シルバースターがQB田村吉明の4TDパスで50-26と勝利し、社会人4連覇を遂げた。

 

[6]高校フットボールの活動

●前年秋に続き、春季は関東高校の千葉、埼玉、茨城地区が独立したリーグ戦を開催した。

 

◆春季大会(高校)

●「春季第10回関東高校選手権大会」は、従来の4校から8校に増やしてトーナメントを開催。準決勝で日大櫻丘高(東京4位)を27-6で破った日大三高(東京1位)と、駒場学園高(東京2位)を32-24で破った日大高(神奈川1位)が決勝で対戦し、日大三高が56-0で快勝し、優勝した。

●「春季第14回関西高校選手権大会」は各府県代表の9チームが参加して開催。準決勝で大産大付高(大阪2位)を35-7で破った関学高(兵庫1位)と、県立長浜北高(滋賀1位)を38-19で破った関西大倉高(大阪1位)が決勝で対戦し、関学高が56-6で勝ち、11連覇を遂げた。

 

◆秋季大会(高校)

■関東地区(高校)

●「高校選手権関東地区」決勝は11月18日、駒沢第二球技場で東京3位の日大櫻丘高と同1位の日大三高の間で行われ、日大三高が2年生が主体の日大櫻丘高を攻守ともスピードで終始圧倒し、41-13で破って創部11年目にして初の関東大会制覇を果たした。

 

■関西地区(高校)

●「高校選手権関西地区」決勝は11月23日、神戸中央球技場で兵庫1位の関学高と大阪1位の関西大倉高という春季大会と同じ対戦となった。両校の対戦は過去5年間の関西地区決勝で4回目。両チームともショットガンの攻撃体型だったが、1Qに関学高が2TDを先行すると、以降も順調に加点し、49-7で勝利した。関学高は9年連続14回目の全国大会出場となった。

 

◆第15回全国高校選手権

●「第15回全国高校選手権」決勝は12月23日、駒沢第二球技場で関学高と日大三高の対戦となった。甲子園ボウル対決の高校版とあって、熱のこもった応援が展開された。

試合は1Qから激しい展開で、日大三高がテンポの速い攻撃で先制TDを挙げたが、関学高は直後のキックオフリターンのロングゲインからの攻撃でTD。さらに、日大三高が続くキックオフでリターンTDと目まぐるしい展開。結局、2Qで逆転した関学高が27-18で制し、11回目の全国大会優勝を遂げた。

関学高は武田建監督の巧妙な戦術もあり、ショットガン体型からQB溝口博行(三年)を軸とするオプションプレー、パスなど多彩な攻めを見せた。この試合、テレビ神奈川が同局にとって初めてとなる高校フットボールのテレビ中継を行った。

 

[7]海外・国際関連の活動

◆外国チーム間の試合(日本国内開催)

●「第8回ミラージュボウル」では名門の米陸軍士官学校(アーミー)が来日。11月17日に国立競技場に40,000人の観客を集めてモンタナ大と対戦し、大接戦の末、45-31でアーミーが勝利を飾った。マーチングバンドは全米屈指のテネシー州立大が来日した。

●「第10回ジャパンボウル」は翌1985年1月13日、横浜スタジアムで開催された。雲一つない好天の下で、始球式は女性スカイダイバー3人が空から試合球を運んだ。1971年以来のQBとしてのハイズマン賞受賞のQBダク・フルーティ(ボストンカレッジ)、OLマーク・トレイノウィッツ(ネブラスカ大)も参加した。試合終了直前には99ヤードのインターセプトTDがあり、西軍が28-14で勝利し、6連勝を遂げた。