元号が昭和から平成へと移ったその元年。フットボール界でもアイビーリーグやNFLチームの来日など、さまざまなことが起こった。学生におけるこのシーズン最大の特徴は、東西の実力差が広がったことであり、その兆候は春の東西1部校の交流戦や定期戦で表われた。東西1部上位5チーム間で行われた日大-関学大、明大-関学大、慶大-同大、東海大-立命大など10試合すべて関東のチームが勝った。これは過去10年で初めてのことだった。
1989.01.01
お知らせ
アサヒビール、クラブチーム初のライスボウル出場
日 付 | 主な出来事 | |
社 会 | 1月7日 | 昭和天皇崩御、新元号「平成」に |
4月1日 | 消費税を導入(3%) | |
6月4日 | 中国・天安門事件発生 | |
8月7日 | 日本オリンピック協会、日本体育協会から独立 | |
9月 | 国立競技場、冬用芝化作業開始 | |
11月9日 | ドイツ、ベルリンの壁崩壊 | |
12月29日 | 日経平均株価史上最高値(38,915円) | |
フットボール | 6月30日 | 日本協会医事委員会、第1回安全対策クリニック開催 |
8月6日 | 12年ぶりのNFLプレシーズン試合、第1回アメリカンボウル開催(東京ドーム) | |
12月6日 | 第3回日本社会人選手権、アサヒビール、日本電気を下し初優勝(東京ドーム) | |
12月23日 | 第2回アイビーボウル、アイビー選抜-日本学生選抜(横浜スタジアム) | |
12月24日 | 全国高校選手権決勝を「クリスマスボウル」とする。法政二高-関大一高(東京ドーム) | |
アメリカンフットボール専門誌『アメリカンフットボール・マガジン』創刊 | ||
翌年1月3日 | 第43回ライスボウル、日大がクラブチーム初の出場のアサヒビールを下し2連覇 |
元号が昭和から平成へと移ったその元年。フットボール界でもアイビーリーグやNFLチームの来日など、さまざまなことが起こった。学生におけるこのシーズン最大の特徴は、東西の実力差が広がったことであり、その兆候は春の東西1部校の交流戦や定期戦で表われた。東西1部上位5チーム間で行われた日大-関学大、明大-関学大、慶大-同大、東海大-立命大など10試合すべて関東のチームが勝った。これは過去10年で初めてのことだった。
[1]主な出来事
●日本協会が前年設置した医事委員会が、過去に発生した頭頚部外傷などの重大事故に関する初めての全国調査を実施した。対象は日本協会所属の全チーム353団体(高校111、大学196、社会人46)。その結果を基に、今後の重大事故発生時の報告を義務化し、協会としての選手の安全対策への取り組みが進み始めた。
その成果の発表として6月30日、国立競技場大会議室で、医事委員会による安全対策クリニックが、関東地区を中心に活動している大学、高校、社会人の監督、コーチ、チームドクター、トレーナー計65人を対象に開催された。今回は医事委員会が日本協会加盟全団体を対象に行ったアンケート調査から、同委員会の川原貴氏(東大、医学博士)の講演、続いて都井伸治氏(日大トレーナー)から防具管理の講演が行われた。以降、より重要性が高まった安全管理に関するチームの垣根を越えた取り組みのスタートだった。
●この頃から、特に社会人チームで、外国選手(多くは米国人)のチーム参加についての是非が言われ始め、社会人協会としての検討が始まった。フットボールの今後の国際化を見据えてチーム力向上からの賛成意見、体格・体力差から時期尚早とする消極的意見などがあった。
●戦後3番目の好景気で雇用は拡大し、またフットボールの社会的認知度も高くなり、日本でフットボール部を有する企業では、社員としてフットボール経験者を採用する傾向が高まってきた。この年のカレッジ東ソーボウル出場選手に対するベースボール・マガジン社の調査(『アメリカンフットボール・マガジン1990年3月号」)では回答者75人のうち、社会人リーグ加盟チームを有する企業へ進む選手が54.7%、準加盟や準備中の企業へは14.7%と、合わせて7割近くがフットボール活動をする企業への就職となった。このボウルゲームに出場していない選手も、かなりの選手がフットボールに関係した進路に進んだと見られる。
[2]競技施設・装具・公式規則
◆公式規則
【この年の日本の主な規則変更】
●ジャージの端を結ぶことを禁止
●フリーキックのボールの位置をキック側の40ヤードから35ヤードへ変更
●相手を指さすことや、手や腕を使用し挑発することを禁止
●「ブロッカーの手はブロッカーの身体のフレームの内側」の制限を攻撃側、守備側の双方とも撤廃
[3]春季試合
◆春季試合(社会人)
●社会人リーグには東西で過去最多となる10チームの新たな加盟があり、協会は春からゲーム運営を調整した。「パールボウル」を実業団選手権に移行するとともに、「ジュニア・パールボウル」をさらに分割し、「関東社会人トーナメント」を新設した。
◆春のボウルゲーム
●第35回西日本社会人選手権
「第35回西日本社会人選手権」は22チームが参加して開催。決勝は5月13日に長居球技場のナイターでの松下電工-サンスターとなった。松下電工が2Q11分、RB不破勲の29ヤードTDランとTFPのキック成功で7-0と先行。サンスターも3Q6分、新QB芝川龍平からWR谷田徳久へTDパスを決めたがTFPを失敗。そのまま田中正仁監督率いる松下電工が1点差で逃げ切った。
●第35回西日本学生選手権
関西の学生の「西日本選手権」は「西日本学生大会」として神戸市立中央球技場、長居球技場、西宮球技場などで開催。神戸大は甲南大を21-3で、関学大は京大を7-0で、立命大は同大を30-6で、近大は京産大を16-7でそれぞれ破った。
●第3回グリーンボウル
三和銀行がイワタニに17-0で完封勝ちし、大会初勝利。名古屋で東西実業団の両雄が対決した「第4回キンシャチボウル」は各Qに得点した日本電気が松下電工に28-10で快勝した。
●第35回西宮ボウル
春のシーズンを締めくくる「第35回西宮ボウル」は6月25日、西宮球場で開催。両軍とも好パサー、好レシーバーがそろって空中戦が展開され、両軍合わせて82のパスが飛んだ。全関東がT本橋康友(法大四年)、G今田健一朗(東海大四年)、C簗瀬智広(慶大四年)、G柏木広志(日大四年)、T金子但(日大四年)らのラインに守られたQB宇田川健治(日大四年)が、RB山口敏彦(日大二年)、WR梶山龍誠(日大三年)、WR大田隆之(東海大四年)らにパスを決めて前進し、山口が31ヤードの独走TDで先制。全関東はその後もパスを主体に得点を重ね、31-7で勝利した。
●第3回ヨコハマボウル
「第3回ヨコハマボウル」は6月11日、横浜スタジアムで初めて3試合を開催した。
・第1試合、慶大と同大の定期戦は1Q、同大がFGで先制。慶大もFGで同点とするとQB岩田聰(三年)からWR横手信一(四年)への61ヤードTDパスでリード。その後、同大もファンブルリカバーやインターセプトで好機をつかむが得点に至らず、慶大が31-24で勝利し、定期戦10連勝とした。
・第2試合の日大-京大は開始早々、ゴール前の京大のファンブルから攻撃権を得た日大が、WR梶山龍誠(三年)への4ヤードパスであっさり先制。京大もファンブルリカバーから得たチャンスでFGを挙げるが、得点はそれだけ。日大はWR小林一(三年)への52ヤードTDパスなどで着々と追加点を挙げ、50-3で大勝した。
・第3試合の明大-関学は接戦となった。立ち上がり、関学はキックオフリターンで高下忠士(三年)が敵陣35ヤードまで好リターンしたチャンスから、最後はRB竹村博志(三年)が飛び込み先制のTD。その後両チームとも守備陣が健闘しながら19-19となり、残り1分から明大はRB横田繁夫(四年、主将)、QB中西啓太(三年)のランで敵陣に迫り、最後は残り9秒で中西がWR富増剛(二年)へTDパスを決め、劇的な勝利を飾った。
●第14回パールボウル
NFLサンフランシスコ・フォーティナイナーズのQBジョー・モンタナ氏の来場でも話題となった「第14回パールボウル」は、「第1回日本実業団選手権」と名称が付加され、6月15日に東京ドームに50,000人の観客を集めてオンワードとレナウンのアパレル業界の対戦で開催。オンワードが41-7で圧勝した。
オンワードは開始早々、RB佐々木弘光が89ヤードのキックオフリターンで先制点を挙げ、1Q中盤にもLB川上祐司がインターセプトを奪い、QB山田喜弘の9プレーのコントロールで最後は川上のFGでリード。その後も4TDを加えた。野田俊行監督の初制覇だった。
「ジュニア・パールボウル」は住友銀行が三井銀行の銀行対決に快勝して2連覇。
[4]秋季試合
◆秋季試合(学生)
■関東(学生)
●関東大学リーグ1部は駒沢第二球技場、駒沢補助競技場、大井陸上競技場、大井球技場を中心に平塚競技場や初の使用となる相模原球場、東京ドームで開催。東京ドームでは1日に朝から晩まで4試合が開催された。
関東大学1部は9月9日に駒沢で開幕。Aブロックの初戦で専大が1部復帰の上智大に敗れる波乱があった。2連覇を目指す日大と明大、立大が3連勝で前半を折り返したが、日大は予想通り立大戦でショットガンを導入し、リーグ序盤戦を欠場したエースRB山口敏彦(二年)の活躍もあって快勝した。序盤精彩を欠いたQB宇田川健治(四年)も終盤にはパスがさえ、リーグ戦を通じて守備も安定し、全勝で危なげなくブロック優勝を果たした。
専大が中盤から立ち直り、守りの堅さで明大、立大を破って2位。立大も守備力が向上して同率2位となった。安定感を失った明大は専大、立大に惜敗し4位に転落。上智大がQB牛嶋秀夫(四年)を中心に積極的なパス攻撃で立大、明大に善戦して5位。1勝の横国大と明学大が入れ替え戦に回り、横国大は東大に屈して5年ぶりに2部降格となった。
Bブロックは第1節で早大が日体大に惜敗し、中盤戦で東海大が早大に完敗するという展開を見せた。慶大は日体大に苦戦したものの、リーグ戦を通じてQB岩田聰(三年)率いる攻撃に加え、守備が常に安定した力を発揮し、全勝で2年連続のブロック優勝を果たした。
東海大は大黒柱のQB柴田成俊(四年)を擁してブロック優勝をかけて慶大戦に臨んだが、敗れて2位。早大、日体大も同率2位となった。法大は2勝にとどまりBクラスに。入れ替え戦では桜美林大がスピード差で筑波大に快勝したが、リーグ戦全敗の帝京大は中大に敗れ、2部に降格した。
●第20回関東大学選手権
「第20回関東大学選手権・パルサーボウル」は横浜スタジアムで前年と同じ顔合わせの日大-慶大で開催。日大は開始4プレー目でRB小林孝至(三年)が25ヤード駆け抜けて先制。慶大もFB吉野純(三年)のTDで同点として1Qが終了。慶大のI攻撃が威力を発揮したが、日大はリーグ戦序盤を負傷欠場したRB山口敏彦(二年)の復調もあり、前半を17-7で折り返すと、後半にショットガン攻撃がさく裂。3Qに宇田川健治(四年)の2TDパスで慶大を突き放し、45-7の大差で4年連続の関東優勝と甲子園ボウル出場を決めた。
■関西(学生)
●関西学生リーグは9月9日に西宮球技場で開幕。主として長居競技場、万博記念競技場、宝ヶ池球技場、西宮球場を使用した。関学大と京大の争いとの下馬評だったが、前年の混戦にいっそう拍車がかかる展開となった。
●前年優勝の関学大は、QB埜下雅基(四年)を欠いたまま甲南大に辛勝するスタートとなった。
近大が同大を1TD差で破り、さらに立命大にも快勝して一気に浮上。10月1日、早くも訪れた関学大と近大の大一番。獲得距離では近大が大きく上回ったが、相手のミスを逃さず点に結び付ける試合巧者の関学大が8点差で勝利し、優勝の行方を決めた。
関学大はその後、厳しい内容ながらも神戸大、立命大、同大を破り、最終の関京戦に引き分け、無敗で2年連続のリーグ優勝を勝ち取った。
京大は第3戦で近大のQB浅井亨(三年)、TE藤田一夫(四年)を中心としたパス攻撃に粉砕されて完敗。そこから立ち直れないまま同大、立命大にも敗れて優勝戦線から脱落した。関京戦は、既に関学大がリーグ優勝は決めていたものの、敗れると近大と同率優勝となり、すると甲子園ボウル出場を懸けたプレーオフを行うことになり、また京大は敗れれば25年ぶりのシーズン負け越しとなる試合だった。関京戦では初開催の甲子園球場に28,000人の観客が集まった。関学大主将RT幸田浩明(四年)、京大主将DT中村明彦(四年)がそれぞれ引っ張る守備陣が健闘し、互いに1FGのみの3-3の引き分けで、関学大の単独優勝が決まった。京大は3敗で5位に沈んだ。
1敗の近大が2位、新人RB堀口靖が活躍した立命大が3位。同大はQB堤典彦(四年)のパスで奮闘したが4位。入れ替え戦には京産大と甲南大が回り、甲南大が関大に敗れて降格となった。
■各地区(学生)
【北海道】 1部は8月27日に開幕、北大が順当に5戦全勝で優勝した。北大は180センチ、90キロ級の守備ラインが相手を封じた。春のトーナメントで北大に勝利した札幌大は振るわず、2勝3敗の4位に終わった。
【東北】 1部は東北大が東北学院大戦こそ15-7だったが、、他の試合は東北大が一方的な勝利を挙げ、5戦全勝で優勝した。
【東海】 1部はこの年昇格した愛知学院大に中京大が6-10で敗れたが、以降の試合に全勝し、優勝した。愛知学院大は3勝2敗で名古屋大とともに2位となった。
【北陸】 金沢大と福井大が接戦を展開し、金沢大が13-12で勝利し、全勝優勝を遂げた。
【中四国】 前年までの1、2部制から、1ブロック4チームのA、Bブロック制となり、各ブロック2位までの4チームのトーナメント決勝で、広島大が愛媛大を14-6で破って優勝した。
【九州】 1部は前年全敗で最下位の九大が見事に復活。福岡大に13-20で敗れたが、佐賀大に敗れた福岡大とともに1敗で同率1位となった。平和台ボウルは直接対決の結果により福岡大が出場した。
●「東日本学生王座決定戦」は11月18日、4年連続の東京開催となる駒沢補助球技場で行われ、東北大が北大を34-17で破り、2連覇3度目の優勝を遂げた。東京開催はこの年が最後となり、翌年以降は仙台と札幌で交互に開催された。
●「西日本学生王座決定戦・平和台ボウル」は広島大が福岡大を34-7で破り、地区対抗学生王座決定戦初出場を決めた。
●「第4回地区対抗学生王座決定戦」は11月23日、横浜スタジアムで東北大と広島大が対戦。広島大は1Q、パントしたボールを東北大がファンブルし、そこで得た攻撃シリーズで、10分にQB牧田孝光(四年)からWR奥村健志(三年)へのプレーアクションパスでTDして先制。さらに東北大のファンブルから得た攻撃で、牧田がSB増田博昭(三年)にロングパスを成功させ、その後TDを挙げて差を広げた。東北大も必死に反撃したが、初出場の広島大が21-12で優勝し、西日本勢初の地区大学王座に就いた。
◆秋季試合(社会人)
●社会人は東西で過去最多の10チームが加盟し、組織が急拡大した。日本社会人リーグは、関東地区の実業団1部と東日本が東京ドームを平日に8回使用し、ほかに駒沢第二球技場、福岡・平和台球場などを使用。前年まで多かった企業グラウンドの使用は、かなり減少した。関西地区の西日本1部は西宮球技場、長居球技場で開催した。
■秋季試合 関東(社会人)
●社会人秋季リーグ戦は、9月3日に東西同時に開幕。実業団1部は春優勝のオンワードがQB山田喜弘を中心に力を発揮し、レナウンに快勝。さらに守備力を誇る日本電気が終了間際の逆転でそのオンワードを破り、優勝争いの先頭に立った。ところが続く福岡・平和台の試合で、日本電気が日産に逆転負け。4チームに優勝の可能性が残されたまま、終盤戦に突入する展開となった。
自力優勝の可能性がある日本電気は、東京ドームでレナウンと対決。同点のまま前半を折り返す苦戦となったが、守備陣がレナウンQB松岡秀樹の足を封じ、終丁直前のK高井竜司の劇的なFGで辛くも勝った。オンワードは日産に敗れて脱落。翌週、山梨での試合で日本電気が三和銀行に快勝し、初のリーグ優勝を確実にした。2敗のオンワードとレナウンがそれぞれ2、3位。日産は日本電気とオンワードを破りながら、富士通、三菱銀行に敗れて4位。三和銀行が5位、富士通が6位。RB川井仁らが加入した三菱銀行は最下位ながら1部初勝利を挙げた。
東日本は今季もまたアサヒビールの独壇場だった。アサヒビールがスポンサーとなって2年目。QB東海辰弥、WR堀古英司という大物選手を加えて話題を集め、1試合平均52得点、3失点という圧倒的な強さで3年連続の全勝優勝を果たした。シルバーオックスは得点力を取り戻したが、アサヒビールには及ばず4勝で2位。前年2位のハーバースは10人の補強が実らず、1勝で5位に転落した。
■秋季試合 関西(社会人)
●西日本は、この年も他を大きくリードする松下電工が全勝で制した。注目を集めたのは2位以下の大きな変動で、常に松下電工と覇権を争ってきたサンスターが、序盤から接戦を落とし、わずか1勝で5位に。2位に躍進したのは、1部に復帰したサイドワインダーズ。第2戦でブラックイーグルスから逆転勝利を収めて波に乗った。以下ブラックイーグルス、レッドベアーズの順。なお古豪ブラックイーグルスが今季よりジャヴァグループの支援を受け、西日本1部のクラブチームはすべて企業の後援を受けることとなった。
■プレーオフ(社会人)
●「東京スーパーボウル」の出場権を懸けた「第39回神戸ボウル」は11月29日、晴天の王子陸上競技場で、3年連続の顔合わせとなった東西社会人の雄、アサヒビールと松下電工の対戦で開催された。アサヒビールは1Q、RB天花寺正巳のランTDで先制すると、次の松下電工の攻撃でDB山田耕三がインターセプトした攻撃から、エースRB東松宏昌が68ヤードを走ってTD。さらに次のキックオフリターンで松下電工のファンブルをDB井上亘が好リカバーし、そこからの攻撃でQB東海辰弥がゴール前20ヤードからショットガンのパスと自らのランでTDを挙げるなど一方的に攻め、56-7で勝利した。
[5]秋季試合(ボウルゲーム)
◆第44回甲子園ボウル
●「第44回甲子園ボウル」は12月17日正午から、甲子園球場に40,000人の観客を集め、通算24回目となる日大と関学大の対戦で開催された。
1Q、日大がRT柏木広志(四年)らのラインに守られたQB宇田川健治(四年)の短いパスでじりじりと関学大陣に攻め込んだ後、RB小林孝至(三年)、山口敏彦(二年)の各TDで先制。関学大も前半終了間際、パスでTDを返し、前半を日大が14-7とリードして折り返した。
後半、関学大はQB埜下雅基(四年)と東村智司(二年)、そしてLB白石章(四年)らの守備陣が持てる技を駆使して健闘を見せたが、4Qに日大のショットガン攻撃が関学大守備陣を粉砕して3TDパス、1TDランの計4TDを連取。結局、日大が45-14で関学大を下し、2年連続19回目の優勝で創部50年目を飾った。
関学大は、日大の佐川省司(四年、主将)、DE吉田真樹(四年)、DE佐々木康元(三年)、LB河野哲朗(四年)らの厚い守備を突破できす、またインターセプト時のホールディングの反則、ノーマークのレシーバーへのパス失敗などで自ら好機を逃がした。ミルズ杯にはパスで46回中36回成功、3TDを挙げた日大のQB宇田川健治(四年)が受賞した。
なお、これまで観客席は野球の外野席のみを使用していたが、観客数の増加もあり、この回から内野席も使用することになった。これに伴い、フィールドがホームベースからスコアボードの方向に、野球のマウンドを削って設置された。2年前の野球規則の改正でマウンドのスロープの制限がなくなり、マウンドの撤去や再生が容易になったことも背景にあった。翌年からまた、以前の外野の芝生部分を使用したフィールドに戻ったが、2010年の第65回大会以降は再びホームベースからスコアボードのフィールドとなり、現在も続いている。
◆第3回日本社会人選手権・東京スーパーボウル
●12月6日、東京ドームで行われた「第3回社会人選手権・東京スーパーボウル」は、日本電気(秋元英昭監督)とアサヒビール(阿部敏彰監督)の対戦となった。アサヒビールは1Qに1TDを先制したが、以降はQB東海辰弥が日本電気の堅い守りを破れず、前半を7-3で折り返した。後半に入り、アサヒビールが1TDを追加したが、日本電気もWR原田孝和の活躍でTDを返し、大接戦となった。しかし、結局はアサヒビールが東海のボールコントロールで14-9で逃げ切り、悲願のライスボウル初出場を決めた。
◆第43回ライスボウル
●「第43回ライスボウル」は翌1990年1月3日、国立競技場に51,000人の観客を集め、日大と初出場のアサヒビールの対戦で開催された。
1Q7分、日大はゴール前1ヤードからQB宇田川健治(四年)が先制TD。2Q12分にはアサヒビールQB東海辰弥のパスを日大DH土谷公宏(四年)がインターセプトから66ヤードのリターンTDなどで、前半は日大が28-0と大きくリードした。
日大は後半も2TD追加するとともに、アサヒビールの反撃を2TDで抑え、42-14で2年連続3回目の日本一に輝いた。松下電工と日本電気をともに1TDに封じたアサヒビール守備も日大のショットガン攻撃に崩れ、攻撃も日大主将のFS佐川省司(四年)を中心とする堅い守りに4インターセプトを奪われるなど、苦い初出場だった。MVPのポール・ラッシュ杯はランで151ヤードを稼いだ日大のRB山口敏彦(二年)が受賞した。
◆その他のボウルゲーム
●シーズン最終戦として定着した「第3回カレッジ東ソーボウル」は、初めて神宮球場で開催され、東軍が明大RB横田繁夫(四年)らの活躍で西軍を25-14で破り、前年の雪辱を果たした。
[6]高校フットボールの活動
◆春季大会(高校)
●「第15回春季関東高校選手権」決勝は県立鎌倉高(神奈川2位)と日大三高(東京2位)の対戦となり、県立鎌倉高が20-13で接戦を制して優勝した。県立鎌倉高の優勝は、公立高校の関東地区史上初の春の制覇だった。
●「第19回春季関西高校選手権」決勝は、箕面自由学園高(大阪2位)と市立紫野高(京都1位)の対戦となり、箕面自由学園高が10-7とこれも接戦で勝利し、優勝した。1974年創部の箕面自由学園高は、関西高校選手権2度目の出場で頂点に立った。
◆秋季大会(高校)
●全国大会の予選には関東4地区64校、関西6地区42校が参加。「第20回高校選手権大会」は地区予選を経た関東、関西各8校によるトーナメントで行われた。
■関東地区(高校)
●「高校選手権関東地区」決勝は11月19日、駒沢第二球技場で法政二高と日大鶴ヶ丘高が対戦。法政二高が試合開始1分で51ヤードのTDランを挙げ、その後も大型攻撃ラインを生かし、ランプレー主体に日大鶴ヶ丘高を圧倒し、38-0で勝利した。
■関西地区(高校)
●「高校選手権関西地区」決勝は11月23日、西宮球技場で関大一高と箕面自由学園高が対戦。1Q6分に箕面自由学園高がTDランで先行したが、関大一高が1Qから2Qにかけて連続3TDを挙げて逆転。後半は箕面自由学園高が追い上げ、4Q6分に28-28の同点に。しかし、試合終了間際に関大一高が48ヤードのFGを決め、劇的な勝利を飾った。
◆第20回全国高校選手権決勝・クリスマスボウル
●「第20回全国高校選手権」は、20回大会を記念して決勝戦を「クリスマスボウル」と名付けた。12月24日、高校フットボールとして初めての東京ドームで、法政二高と関大一高が対戦。15,000人の観客を集めた。互いの守備陣の健闘で息詰まる攻防を展開。法政二高が2QにDT小柳謙悟(三年)、3QにNG小柳亮介(三年)がそれぞれ挙げたセーフティーの4点だけで4Qに突入。11分、法政二高は14ヤードのTDランでやっと追加点を挙げ、10-0で勝利した。東京ドームでの開催は、隔年で関東・関西で行われるクリスマスボウルの関東開催時で4回目使用の1995年まで続いた。
[7]海外・国際関連の活動
◆日本チームの活動(国内開催)
●日米交流戦、「第2回エプソンアイビーボウル」は12月23日に開催された。この年から米国チームは、米国東部7州の8大学で構成するアイビーリーグ(ブラウン大、コロンビア大、コーネル大、ダートマス大、ハーバード大、ペンシルベニア大、プリンストン大、イェール大)のオールスターチームとなり、46人が来日した。アイビーオールスターのチーム編成は、米国でも初めてのことだった。日本チームは関東1、2部、北海道、東北の各リーグから選抜された70人で編成した。
前半、パス攻撃で日本が10-14とアイビーリーグに迫ったが、後半はターンオーバーなどのミスが重なり、17-49で敗戦。しかし、日本は宇田川健治(日大四年)からWR梶山龍誠(三年)へのTDパスなど2TDを獲得。第1ダウンの更新はアイビーの23に対して22、攻撃の総獲得ヤードはアイビーの390に対し382と互角だった。アイビーのLBを含めた守備フロントの平均189センチ、102キロに対して日本の攻撃ラインは180センチ、91キロとまだまだ大きな差があったが、前年の第1回大会に比べて健闘した。最優秀選手にはハーバード大のLBマッキンタイアーが選ばれた。
なお、アイビーオールスターには、NFLのボルティモア・コルツのQBとして1956年から72年に活躍したスーパースター、ジョニー・ユナイタス氏(NFL殿堂顕彰)がコーチとして参加。来日後の練習から当日の試合まで大きな話題となった。
◆日本チームの活動(海外開催)
●2月4日、関西社会人は社会人関西支部創立20周年記念として、関西社会人オールスターチームをグアム島に派遣。現地の強豪ハルス・エンジェルスとジョージ・ワシントンフィールドで対戦した。
三重野大輔監督(松下電工)率いる39人の関西オールスターは前半、MG山本不二夫(松下電工)、DT泉信爾(サンスター)、DT松村康正(ブラックイーグルス)、DE奥村哲夫(ブラックイーグルス)、山本康弘(松下電工)らの学生時代の猛者の活躍でセーフティーを挙げて2-0で折り返したが、後半はエンジェルスの攻撃を止め切れず、8-28で敗れた。
●6月4日、京都産業大は韓国へ遠征。考昌運動場で韓国学生選抜と対戦した。京産大は最初の攻撃のプレーでファンブルし、そこからの韓国の攻撃でTDを許す苦しいスタート。しかし、その次の攻撃で11プレーかけてTDを挙げると、以降順調に得点を重ね、50-22で勝利した。試合後、韓国側の要望で1時間の模範練習を行った親善試合だった。
◆外国チーム間の試合(日本国内開催)
●1976年のスターボウルから13年、NFLのプレシーズンゲーム、「アメリカンボウル」の第1回が8月6日、東京ドームで開催された。対戦は気鋭の若手QB、ジム・エベレットが率いるロサンゼルス・ラムズと78年の「第4回ジャパンボウル」で来日し、日本でも人気の高いQBジョー・モンタナのサンフランシスコ・フォーティナイナーズ。米西海岸のチーム同士の対戦は、ラムズが16-13で接戦を制した。
当日の計時員とチェーンクルーは日本審判協会関東審判部が担当した。日本で採用するNCAAとNFLの計時関係のルールは大きく異なっており、関東審判部では試合の約3か月前から送付されてきたNFL公式規則書を全訳し、独自の計時マニュアルを制作して担当者で準備を重ね、問題なく試合を支援することができた。この支援は、アメリカンボウル開催全試合で行われ、すべての試合で問題がなかった。
また、試合当日は関東地方直撃の台風13号が襲来する中での開催となったが、試合終了後の同夜の両チームの帰国便は欠航にはならず、無事に米国に出発した。チーム関係者は東京ドームでの試合後すぐにャワーを浴び、強風の中で成田空港に直行した。このアメリカンボウルは2005年まで13回開催され、日本フットボール界の真夏のイベントとして親しまれた。
●「第13回コカコーラボウル」は12月3日、2年目の東京ドームで、インディペンデント(カンファレンスに属さない独立校)を代表する2チーム、シラキュース大とルイビル大が対戦し、シラキュース大が24-13で勝利した。
●「第15回ジャパンボウル」は翌1990年1月14日、晴天の横浜スタジアムで開催。東軍が24-10で西軍を破った。オールアメリカンが10人来日、特に東軍のRBアンソニー・トンプソン(インディアナ大)、WRクラークストン・ハインズ(デューク大)、OLエリック・スティル(テネシー大)の3人は、米国のカレッジオールスターを選出する5機関すべてでオールアメリカンとなった選手だった。