ライスボウルが日本選手権となって8年目。会場を東京ドームに移して開催し、社会人のオンワードが学生日本一の関学大を破って初優勝し、社会人チーム2度目の日本一となった。これまで学生が社会人に勝利することが多かったが、社会人チームが対等の実力を付けてきた。女子フットボール3番目のチームとして第一生命レディコングが活動開始。女子チーム間の試合が開催できるようになった。
1991.01.01
お知らせ
オンワード、ライスボウルで初優勝。社会人チーム6年ぶりの日本一
日 付 | 主な出来事 | |
社 会 | 1月17日 | 多国籍軍のイラク空爆、湾岸戦争勃発 2月27日:多国籍軍、クウェート解放 |
6月15日 | 1998年冬季オリンピック、長野で開催決定 | |
7月1日 | ワルシャワ条約機構解体 | |
12月25日 | ゴルバチョフ大統領辞任、ソビエト連邦崩壊 | |
フットボール | 3月21日 | 関西協会、新事務所を阪急西宮スタジアムへ |
5月20日 | 川崎球場使用開始 | |
6月22日 | 早大-慶大、米ハーバード大スタジアムで対戦 | |
12月8日 | 女子フットボール「第1回クイーンボウル」、大阪興銀-第一生命(グリーンAiランド) | |
12月11日 | 第5回日本社会人選手権、オンワード、サンスター下し初優勝(東京ドーム) | |
12月23日 | 第4回アイビーボウル、アイビー選抜-学生全日本(東京ドーム) | |
翌年1月3日 | 第45回ライスボウル、会場を東京ドームに移して開催。オンワード、関学大を下し初優勝 |
ライスボウルが日本選手権となって8年目。会場を東京ドームに移して開催し、社会人のオンワードが学生日本一の関学大を破って初優勝し、社会人チーム2度目の日本一となった。これまで学生が社会人に勝利することが多かったが、社会人チームが対等の実力を付けてきた。女子フットボール3番目のチームとして第一生命レディコングが活動開始。女子チーム間の試合が開催できるようになった。
[1]主な出来事
●前年の「住友生命スカイブルー・エンジェルス」に続き、日本で3番目の女子フットボールチーム、「第一生命レディコング」(長谷川尚子主将)がクラブチームとして26人で発足し、活動を開始した。また、既に活動を始めていた女性初のフットボールチームの大阪興銀(現・近畿産業信用組合)が日本社会人協会に準加盟した。
●5月26日、西宮スタジアムで開催された「フラワーボウル」の第3試合で千趣会の権野勝選手が4Qのパントカバー時に転倒して呼吸停止状態となり、人工呼吸などの応急措置が取られたが亡くなった。社会人の試合としては初めての死亡事故であり、社会人協会ではその対応と今後の対策に関しての協議がなされた。
●近年充実してきた選手の安全対策の一環として、関東大学連盟では秋の公式戦から、その試合の医療関係の初期処置や判断を行うゲームドクター制度を採用。登録医師53人で実施した。また、この制度下での公式戦の外傷記録システムを導入した。このシーズンの対象82試合で重大事故の発生はなかった。その後、この制度が全国の協会や連盟に順次拡大していった。
●わが国で最初にタッチフットボール公式戦を府立豊中高と行った府立池田高の校内に記念碑が設立され、10月5日に除幕式が行われた。碑には「中学校タッチフットボール 高等学校アメリカンフットボール 発祥の地」と刻まれた。
●この頃、フットボール人気とともに、米国ボウルゲームの観戦ツアーが多く催行された。
試合日 | 場所 | 観戦ツアー | 日数 | 発着 | 料金 | 試合結果 |
1992年1月1日 | ロサンゼルス | 第78回ローズボウル | 7日間 | 成田 | 312,000円 | ワシントン大34-14ミシガン大 |
1992年1月26日 | ミネアポリス | 第26回スーパーボウル | 7日間 | 成田 | 368,000円 | ワシントン・レッドスキンズ37-24バファロー・ビルズ |
1992年2月2日 | ホノルル | 第22回プロボウル | 6日間 | 成田 | 137,000円 | NFC21-15AFC |
参考:1992年大卒初任給186,900円(厚生省調査)、同年為替平均レート1ドル=126.65円
[2]競技施設・装具・公式規則
◆公式規則
【この年の日本の主な規則変更】
●フリーキックがアウト・オブ・バウンズに出た場合、キックの地点の30ヤード前方でレシーブ側が攻撃することも可能になった。
●試合の品格を汚す行為が禁止された。
[3]春季試合
◆春季試合(学生)
●5月3日、国立競技場で開催された第23回日大・法大定期戦は、法大が前年爆発的な得点力を誇ったオプションプレーの威力を見せ付けた。QB今手義明(四年)がキープから独走して3TDを挙げ、法大が21-17で勝利した。法大は10年ぶりの定期戦勝利で、対戦成績を3勝19敗1分とした。日大は4年前の甲子園ボウルで京大に負けて以来の敗戦となり、連勝記録は59でストップした。
◆春のボウルゲーム
●第37西日本選手権
「第37回西日本学生大会決勝」は5月12日、雨の西宮スタジアム(この年、「西宮球場」から改称)で関学大と京大が対戦した。関学が1QにFGで先制したが、京大はすぐにQB金岡禧友(三年)の1ヤードTDランで逆転。さらに3Qにも金岡の1ヤードTDランで追加点を挙げ、17-10で勝利した。京大の攻撃獲得ヤードのうちランはわずか4ヤードで、パスで248ヤードを稼いだ。
「第37回西日本社会人選手権」はこの年も松下電工が不在で、東海地区、九州地区のチームも参加して計34チームで3月17日に開幕。5月19日の決勝まで2か月余の熱戦を展開した。決勝はサンスターがイワタニとの接戦を制して17-12で勝利し、初優勝を遂げた。
●第37回西宮ボウル
「第37回西宮ボウル」は6月23日、雨の西宮スタジアムで開催。1Q半ば、関東はQB今手義明(法大四年)が自身の19ヤードキープやWR田中秀樹(日体大四年)への33ヤードパスで相手エンドゾーンに迫り、最後はRB山口敏彦(日大四年)のダイブで先制。関東はその後も得点を重ね、34-13で勝利した。MVPはただ一人一年生として出場した日大QB鈴木和佳が受賞した。
●第5回ヨコハマボウル
「第5回ヨコハマボウル」は5月9日、横浜スタジアムで開催された。
・第1試合、2年前のヨコハマボウルで対戦した同大と慶大が再び対戦。同大は前半、0-16と大きくリードされたが、後半にQB八木健太(二年)からピッチを受けたTB八田潤(四年)が右サイドライン際を60ヤード独走するTD。その後も3TDを加えて慶大を26-19で破り、前回の雪辱を果たした。
・第2試合の日大-京大は、ヨコハマボウルでは隔年で対戦し、これが3回目の対戦。開始早々、京大がQB金岡禧友(三年)からSE高橋健司(四年)への63ヤードのTDパスで先制した。その後、両チームとも1TDを挙げて迎えた2Q後半、日大がCB永井康二(四年)の79ヤードのインターセプトリターンTDで追い付き、さらに2TDを追加。追いすがる京大1TDのみに抑えて28-21で勝利した。ヨコハマボウルの京大戦は3戦全勝とした。
・第3試合の関学大-明大は明大が1Q3分に川島基寛(四年)の83ヤードのパントリターンTDで先制したが、関学大はRB三木淳平(二年)、TB加藤浩司(三年)のTDランで逆転。その後も明大の反撃を抑え、38-7で快勝した。
●第16回パールボウル
「第16回パールボウル」は6月13日、東京ドームに53,000人の観客を集め、前年に続いて日本電気とオンワードが対戦。両チームの守備陣が健闘し、パントの応酬となった。2Q、日本電気は自陣24ヤードからの攻撃で、6プレーかけて敵陣2ヤードに前進。最後はQB河野厚也がエンドゾーンに飛び込みTDし、均衡を破った。その後も守備戦は続き、4Q9分にオンワードのLB宇佐美豊がエンドゾーンで河野をとらえセーフティーの2点を返した。しかし、日本電気は最後まで守り切り、7-2で初優勝を遂げた。ゲストとしてNFLサンフランシスコ・フォーティナイナーズのQBジョー・モンタナ氏が来場。始球式の後、前半のテレビ解説を担当し、話題を集めた。
19チーム参加の「ジュニア・パールボウル」決勝が第1試合として行われ、鹿島が三武を21-13で破って初優勝した。
●「第5回グリーボウル」は6月21日に長居球技場で行われ、三和銀行がイワタニを15-9で破り、3連勝とした。
●「第6回キンシャチボウル」は実業団の3位決定戦として開催し、レナウンが松下電工を34-0で破った。
[4]秋季試合
◆秋季試合(学生)
■関東(学生)
●関東大学1部リーグは9月15日、前年初めて使用した千葉マリンスタジアムで開幕。このほか横浜スタジアム、大井陸上競技場、東京ドームに加え、川崎球場を新たに使用した。スタジアムでの試合が多くなり、1部では駒沢陸上競技場、駒沢第二球技場での試合は全体の2割ほどになった。
ブロック優勝経験を持つ4校がそろったAブロックは、ライスボウル4連覇を目指す日大が全勝街道を走った。日大は早大に3Qまでリードされたが、封印していたショットガンを解いてあっさり逆転し、21-10で勝利。最終節の明大にもショットガンで大勝し、全勝でブロック1位となった。
明大は前半戦、持ち前の高い得点力を発揮したが、早大に引き分けると、日大には大敗を喫して2位に終わった。前年、入れ替え戦の屈辱を味わった東海大は明大と日大には敗れたものの、残り4試合に連勝して3位に浮上。早大は開幕2連勝の後、東海大に1点差で惜敗したが、リーグ中盤から頭角を現わしたRB堀田大介(三年)の活躍で明大に引き分け、日大にも善戦してリーグ戦を盛り上げた。
5位は中大、日体大、立大が1勝5敗で並んだ。中大は守備の奮起で立大から10年ぶりの勝利。日体大は相次ぐ主力の故障で苦戦を強いられ、立大は攻守に精彩を欠いた。抽選の結果、立大と日体大が入れ替え戦へ回り、立大は城西大を、日体大は帝京大をそれぞれ破って残留した。
Bブロックは法大が評判通りの戦いぶりを見せたが、専大にまさかの敗北。専大は初戦で東大に13-14で敗れたが、その後はウィッシュボーン体型からQB含めて4人の好バックスを駆使したスピードあるランプレーを核に、安定した攻撃を展開。法大戦では強力なオプションを封じ、21-18で接戦をものにした。慶大を無失点に抑えた守備の健闘が光った。
結局、法大と専大が5勝1敗で並んだが、直接対決の結果で専大が5年ぶりに関東大学選手権・パルサーボウル出場を決めた。筑波大は初戦で慶大に完封勝ちして注目され、3位に躍進。慶大は3勝3敗と3年連続ブロック優勝から大きく後退。明学大は開幕3連勝したが、上位には敗戦が続いた。優勝した専大に初戦で土をつけた東大はその後、本領を発揮できず、上智大は全敗。入れ替え戦では東大は横国大を、上智大は学習院大をそれぞれ破って残留した。
●第22回関東大学選手権
「第22回関東大学選手権・パルサーボウル」は、小春日和の横浜スタジアムで開催。近年まれにみる大接戦となった。日大が10点を先行したが、専大が2Q、RB須黒浩(三年)の3ヤードラン、QB頓宮英彦(三年)からRB関沢剛二(三年)への32ヤードパスでTDを挙げて17-10と逆転した。
その後、点の取り合いとなったが、4Qに日大が再逆転。しかし、専大は残り1分でRB粳田盛(四年)がゴール前3ヤードから飛び込んで33-31と再々逆転。試合終了45秒前に日大に攻め込まれたが、専大陣31ヤード地点からの日大のパスをDB佐山夏樹(三年)がもぎ取り、創部29年目で初の甲子園ボウル出場を決めた。
■関西(学生)
●関西学生リーグは西宮スタジアムを主会場として開催。長居球技場、宝ヶ池球技場なども使用した。
関西学生リーグは9月7日に開幕。京大-関学大は初戦から3連勝した京大が優勢かと思われたが、京大が残り16秒で逆転を狙ったFGが外れ、関学大が16-14で勝利した。また、同大が神戸大に敗れて全勝が消える大混戦に。京大はQB金岡禧友(三年)のパス攻撃が伸び悩み、神戸大と立命大に苦戦した。
前年6位の関学大はユニフォームとロゴを刷新。前年、怪我で欠場したQB東村智司(四年)が復帰し、開幕の同大戦に臨んだが、13-14で敗戦。しかし、その後持ち直して立命大には28-10で勝利。宿敵・京大には見事な逆転勝利、6勝1敗で終了。前年の不振から一躍優勝へと昇り詰めた。
同大は関学大に勝利したものの、神戸大にはトリプルオプションを封じられ、5TDを許して完敗。立命大は山場の関学大戦に完敗したが、近大には苦戦したながらも引き分け寸前でK田部浩尚(四年)が53ヤードFGを決めて勝利。同大にも完封勝ちで勢いに乗ったが、優勝を懸けた京大戦に敗れて涙を飲んだ。
神戸大はラン1位のRB井場睦之(二年)の活躍が光り、後半戦で実力を発揮しただけに、序盤の不調が惜しまれる結果に。3年ぶりに1部に復帰した大体大は終盤戦で持ち味を発揮し、2勝を挙げて1部に残留。近大は中盤以降の接戦を落として18年ぶりに入れ替え戦に回り、京産大に敗れて初の2部降格となった。関大は入れ替え戦で甲南大に勝って残留した。
結局、1敗を守った京大と関学大が同率優勝となり、11月24日に甲子園ボウル出場を懸けてプレーオフで激突した。プレーオフの関京戦は15年ぶり2回目。西宮スタジアムに37.000人の観客を集め、接戦を演じた。関学大は同点で迎えた4Q、R谷本繁樹(四年)の70ヤードのパントリターンでチャンスをつかみ、4分にQB東村智司(四年)が1ヤードをダイブして決勝のTD。主将DT池之上貴裕(四年)を中心に強固なラインが守り、京大を30-23で振り切って、2年ぶり38回目の甲子園ボウル出場を決めた。
●近年の部員数増加で、若手選手に少しでも試合の機会を提供しようという趣旨で、関西学生連盟は大学一年生を対象とした「第1回フレッシュマンリーグ」を開催。参加した3校でリーグ戦を行い、1位追手門学院大(2勝)、2位龍谷大(1勝)、3位神戸商科大となった。フレッシュマンリーグは翌年以降も開催された。
■各地区(学生)
【北海道】 小樽商大が北大に残り15秒からの逆転TDパスで16-14で勝利。北大が6年続けてきたリーグ戦の連勝は35でストップした。優勝は札幌学院大で、北大と引き分け、小樽商大に勝利した。強豪の北大と札幌大を押えての初優勝だった。
【東北】 常勝・東北大に東北学院大が健闘し、14-14で4Qを終了。この年の公式規則変更で設けられたタイブレーク方式(ゴール前25ヤードから互いに攻撃する)の日本での初適用となった。延長節では東北学院大がFGを決めたのに対し、東北大がTDパスを決めて20-14で勝利し、8回目の優勝と5回目の東日本代表決定戦の出場を決めた。
【東海】 最終戦で中京大が前年優勝の名古屋大に28-0で勝ち、2年ぶり8回目の優勝を遂げた。
【北陸】 金沢大が全勝で4年連続9回目の優勝。前年4戦全敗で5位の金沢医大が健闘し、3勝1敗で2位となった。
【中四国】 Aブロックは前年1部に昇格して平和台ボウルに出場した愛媛大が1位。Bブロックは広島大を破った山口大が1位となり、両者の優勝決定戦で山口大が14-6で勝利し、4年ぶり3回目の優勝を遂げた。
【九州】 ここ4年、毎年優勝校が代わっていたが、西南学院大が4勝1敗で連覇した。1敗は熊本大に0-6で敗れたもので、殊勲の熊本大は3勝2敗で福岡大と同率3位となった。2位は4勝1敗の九大。
●「地区対抗学生王座決定戦」の出場権を懸けた東日本代表決定戦の「第6回パインボウル」は11月3日、好天に恵まれた厚別公園競技場で、東北大と札幌学院大が対戦した。1Q、東北大がTDランで先制すると、札幌学院大もQB飯田繁信(四年)がプロI体型からオプションプレーを展開して自ら65ヤードのTDランを挙げ、前半は7-7で折り返した。4Q、東北大はLB助川博之(三年)のパントブロックからの42ヤードのリターンTDなどで札幌学院大を引き離し、19-7で4年連続5回目の優勝を決めた。
●一方の「西日本代表決定戦・平和台ボウル」は11月4日、絶好の試合日和の博多の森競技場で山口大と西南学院大が対戦した。1Q、山口大はQB門出知(二年)のTDパスで先制し、2Qに西南学院大が1TDを挙げて追い掛けた。その後は無得点が続いたが、4Qに山口大が1TDを追加して14-6で勝利し、「地区対抗王座決定戦」の出場を決めた。山口大は西南学院大のオプション攻撃を防いだNG中村昌登(四年)、DT小田浩嗣(三年)、引地隆良(四年)の活躍が光った。
●「第6回地区対抗学生王座決定戦」は11月23日に横浜スタジアムで開催。前年に続いて東日本代表の東北大が西日本代表の山口大を7-0で破り、2連覇を遂げた。3Q、東北大の激しいラッシュで山口大のパントがキックミスに。東北大は敵陣12ヤードからの攻撃となり、最後はRB大島達樹(三年)が均衡を破るTDランを挙げ、これが決勝点となった。両チームの守備陣が健闘し、東北大が第1ダウン更新7回、総獲得144ヤード、山口大は8回、198ヤードだった。東北大はここまで6回の大会で4回目の優勝となった。
◆秋季試合(社会人)
●東日本はリーグ戦で東京ドームを11日使用し、千葉マリンスタジアム、横浜スタジアムなどで開催した。西日本は西宮スタジアムと長居球技場他を使用した。
■秋季試合 関東(社会人)
●東日本社会人リーグは9月6日に開幕。Aブロックはアサヒビールが初戦でリクルートに引き分けたものの、守備陣のメンバー一新が功を奏し、レナウンには粘り抜いて勝利し、三和銀行にも1TD差で勝ってブロック優勝を果たした。レナウンは前年からボールコントロールに徹したチームづくりで力強いドライブを展開したが、惜しくも2位。日本電気は劣勢の終了間際で逆転に結び付ける勝負強さを発揮し、三和銀行戦などで底力を見せた。三和銀行は攻撃ラインに自信を持っていたが、日本電気に惜敗すると、その後も攻撃が伸び悩んで4位。リクルートは守備が健闘したが5位となり、シルバーオックスは得点力不足を克服できず、入れ替え戦でも鹿島に敗れて降格となった。
Bブロックはオンワードが攻守に安定した力を発揮。山田喜弘、須水恭通の両QBがともに好調でブロックを制覇した。富士通はシーズンが進むにつれて力を発揮し、全勝で最終戦のオンワードに挑んだが、あと一歩届かなかった。注目されたのは三菱銀行。攻守にパワーあふれる展開で開幕2連勝し、オンワード、富士通にも善戦して中位に浮上した。住友銀行と日産プリンスは序盤にエースQBを負傷で欠いて力を発揮できなかった。1部初挑戦の三菱電機は富士通と接戦を演じて話題となったが、結局入れ替え戦に回り、太陽神戸三井銀行に辛勝して残留した。
■秋季試合 関西(社会人)
●西日本社会人リーグは9月1日に開幕。Aブロックはサンスターが1試合平均476ヤード、58.8得点と攻撃力を発揮し、守っても無失点と好調で、念願のブロック優勝を果たした。イワタニは序盤の不振から立て直しを図ったが、サンスター戦でのターンオーバーが響いた。名古屋は新旧交代期で戦力が低下し、イワタニにも零封されて中位に甘んじた。富士ゼロックスは念願の1勝を挙げ、1部定着への第一歩を踏み出した。レイクは全敗で、入れ替え戦もNACLに敗れて2部降格となった。
Bブロックはこの年も松下電工の独壇場となった。2位はジャヴァ、千趣会、ミキハウスの3チームが並び、得失点差で順位が決まった。阪急は1部初挑戦でQBの故障で大敗が続いたものの、入れ替え戦ではトヨタに9-7で勝ち、残留した。
●初の女性チーム、大阪興銀ワイルドキャッツが日本社会人協会に準加盟し、12月8日に女子フットボールの親善試合(練習試合)、「クイーンボウル」が大阪のグリーンAIランドで開催された。大阪興銀ワイルドキャッツ(部員63人)-第一生命レディコング(部員23人)で、第一生命が先制したが、大阪興銀がQBのランで逆転し、22-8で勝利した。親善試合とはいえ、わが国最初の女子フットボール試合。5年前に結成された大阪興銀はこの間、部内で紅白戦を行ってきて、これが念願の初の対外試合だった。なお、両チームの初の公式戦(日本初の女子フットボールの公式戦でもある)は2年後の1993年に開催された。
■プレーオフ(社会人)
●「ファイナル4イースト(東日本代表決定戦)」は、東京スーパーボウルの出場権を懸けてアサヒビールとオンワードが対戦した。アサヒビールが先行したが、オンワードが1TDを返して10-7に。さらにオンワードは、試合終了間際にK川上祐司が43ヤードのFGを決めて同点とし、2年連続引き分けのまま、今季から採用のタイブレーク方式の延長戦にもつれこんだ(前年までは抽選)。先攻のオンワードがTDとTFPで7点を挙げた後、裏の攻撃でアサヒビールもTDを挙げたが、しかし2点を狙ったTFPが失敗に終わり、オンワードが2年連続の東京スーパーボウル出場を決めた。
●「ファイナル4ウエスト(西日本代表決定戦)」はサンスターが松下電工に挑戦。松下電工はRB川畑竜広の独走で先制TDを挙げたが、その後は5インターセプトを喫する内容。サンスターはCB桐原聡のインターセプトリターンTDから勢いに乗り、19-7で見事に初の東京スーパーボウル出場を果たした。
[5]秋季試合(ボウルゲーム)
◆第46回甲子園ボウル
●「第46回甲子園ボウル」は12月15日、甲子園球場に過去最多となる45,000人の観客を集め、関学大と初出場の専大が対戦した。
専大は1Q早々、ラン攻撃で敵陣に攻め入ったが、ここで関学大守備陣が奮闘。DE糸井真一郎(二年)のQBサックやDB桑田修吉(二年)のFGブロックなど、主将DT池之上貴裕(四年)を中心とする守備陣が専大の攻撃を止めた。
その後、関学大の攻撃はC河原田高雄(四年)らの攻撃ラインに守られた周到なプレー展開で、序盤に初出場でまだ甲子園ボウルに慣れていない専大の守備を翻ろうし、鮮やかな速攻を見せた。1Qに一年生RB前島純の49ヤードTDランで先制し2Qにも小刻みなラン、パスで前進してRB芝原学(二年)が左隅に8ヤードTDランで追加点を挙げるなど、前半に3TDを先取し、22-0とリードした。
専大のウィッシュボーン攻撃は前半こそかみ合わなかったが、3Qに関学大のパスをDE神保聡(三年)がインターセプトしてから流れが変わり、スピードとパス中心の攻撃で3Q8分にRB粳田盛(四年)の12ヤードランでTDし、QB頓宮英彦(三年)のパスも決まり出した。専大は4Qにも2TDランで猛追したが及ばず、関学大が前半のリードをDB峯村健太郎(四年)らの守備陣が守り切って25-20で勝利し、6年ぶり18回目の優勝を飾った。関学大は前年、関西学生リーグで6位の成績から伊角富三監督の下で見事に復活した。ミルズ杯には関学大の主将DT池之上貴裕(四年)が選ばれた。
◆第5回日本社会人選手権・東京スーパーボウル
●5回目を迎えた「日本社会人選手権・東京スーパーボウル」は東京ドームに史上最多、超満員となる53,000人の観客を集めて行われた。2回目出場のオンワードと初出場のサンスターと、ともにライスボウル初出場を目指すチーム同士の対戦。オンワードは前半を14-10で折り返すと、後半は5TDという猛攻で49-10で快勝し、初のライスボウル出場を決めた。サンスターはこれまで被インターセプト0だったQB芝川龍平が3インターセプトを喫し、TDはCB桐原聡のファンブルリターンのみにとどまった。最優秀選手にはオンワードのQB山田喜弘が選ばれた。
◆第45回ライスボウル
●「第45回ライスボウル」は翌1992年1月3日、これまでの国立競技場から東京ドームに会場を移し、ライスボウル史上最多となる56,000人の観客を集め、オンワード(野田俊行監督)と関学大(伊角富三監督)が対戦した。
1Q、オンワードが4分、9分にRB山口一利がランからTDを挙げ、14-0と先行。関学大も2QにK中筋圭吾(三年)の45ヤードと33ヤードのFGで6点を返して前半を折り返した。
後半、オンワードは山田喜弘、須永恭通の2QBがラン、パスで主導権を握り、3Q0分に須永の43ヤードランで、7分には須永からSE河本真治への45ヤードTDパスで関学大を突き放し、28-6で念願の初優勝を果たした。社会人の日本一は6年ぶり。
関学大のボール所有時間は約34分と、オンワードの約26分を上回ったが、TDを挙げることはできなかった。これで社会人は8回目の学生との対戦で2勝目。MVPのポール・ラッシュ杯はオンワードのRB山口一利が受賞した。
◆その他のボウルゲーム
●「カレッジ東ソーボウル」は西軍が39-10で東軍を破って3年ぶりに勝利を収め、関西に貴重な2勝目をもたらした。
●「ホール・オブ・フェイム・ゲーム=神戸ボウル」はジャヴァがイワタニを19-14で破って西日本3位を決めた。西日本リーグの入れ替え戦は、翌年西日本1部が1ブロック6チームで編成されるため、2部ブロック優勝のマイカルと正英が1部に昇格。1部最下位と2部2位がそれぞれ入れ替え戦を行なった。
[6]高校フットボールの活動
◆春季大会(高校)
●「第17回春季関東高校選手権」は準決勝で鎌倉学園高(神奈川2位)を17-0で破った早大学院(東京1位)と、中大付高(東京2位)を14-10で破った法政二高(神奈川1位)が決勝で対戦し、小雨の中、ともにファンブルを連発したが、法政二高が17-13で勝利し、優勝した。
●「第21回春季関西高校選手権」は1回戦で強豪・関学高が大産大付高に0-3で敗れ、春の大会では初の1回戦敗退となった。その大産大付高(大阪2位)は準決勝で平安高(京都1位)に16-19で敗れた。もう一方の準決勝は箕面自由学園高(大阪1位)が宝塚東(兵庫1位)を30-0で破った。決勝は2年ぶり2回目の決勝進出の箕面自由学園高と初出場の平安高の対戦となり、箕面自由学園高が9TDを挙げて63-19で2年ぶり2回目の優勝を果たした。
◆秋季大会(高校)
東京で2校、大阪で1校、滋賀で1校が新たに加盟し、秋の大会には加盟119校中112校が参加した。
■関東地区(高校)
●「高校選手権関東地区」決勝は11月10日、駒沢第二球技場で早大学院と中大付高が対戦。1Q2分、中大付高が25ヤードのTDランとTFPで7点を先行。早大学院はランが止められるとパス攻撃に転換し、4人のレシーバーが活躍して3TDを挙げ、21-7で勝利した。早大学院のパス獲得は201ヤード。
■関西地区(高校)
●「高校選手権関西地区」決勝は11月24日、西宮球技場で大阪府大会決勝と同一カードの箕面自由学園高-関西大倉高となった。箕面自由学園高は関西大倉高のパワープレーに苦しめられながらも、前半を17-14で折り返し、その後の関西大倉高の追い上げをしのいで29-23で勝利した。
◆第22回全国高校選手権決勝・クリスマスボウル
●「第22回クリスマスボウル」は12月22日東京ドームに約10,000人の観客を集め、箕面自由学園高と早大学院が対戦した。
早大学院は最初の攻撃シリーズでTDランを挙げて先制。箕面自由学園高も直後の攻撃でTDランで同点とした。以降、互いに得点を重ね、箕面自由学園高が42-35とリードして迎えた4Q10分、早大学院が2ヤードのTDランで1点差に。しかし、2点を狙ったTFPが失敗し、逆転とはならなかった。箕面自由学園高は劇的な初優勝を遂げた。
[7]海外・国際関連の活動
◆日本チームの活動(国内開催)
●「第2回平成ボウル」は関東からのチームは立大から明大に代わり、その明大にオレゴン大が、関学大にワシントン大が加わり、6月30日に西宮スタジアムで開催された。関学大とワシントン大の連合チームが45-12で勝利した。関東の大学チームが参加したのはこの年までとなり、翌年から関西の大学にそれぞれ米国のチームが加わる形式となった。
●「第4回アイビーボウル」は12月23日、初めて東京ドームで開催された。これまで3回のアイビーボウルは関東学生が主体となり、大会によってはそれに関西を除く各地区の大学から何選手か参加することもあったが、今回は関西からの選手も参加し、「学生日本代表」の編成となった。アイビーリーグはダートマス大が6勝1分で優勝し、ダートマス大と引き分けたハーバード大とともにチームの主力となって来日した。
試合開始で攻撃権を得たアイビーチームが9プレーでTDを挙げたが、以降は日本守備陣が速さを武器にプレッシャーを掛け、インターセプトやQBサックなどで3Q半ばまで無失点に抑えた。しかし、体格差によるアイビーチームの壁は厚く、日本の攻撃は無得点で試合終了。アイビーチームが24-0で勝利した。日本は敗れたものの、1964年のハワイ遠征以来となる関東・関西の学生が1チームとなった全日本学生チームの編成は、12月上旬の合同練習開始からチームの一員として活動し、試合後も日本のフットボール界にいい影響をもたらした。
◆日本チームの活動(海外開催)
●6月16日に早大、慶大の両校が渡米。慶大はハーバード大、早大はイェール大のコーチ陣のアドバイスを受けながら、現地で調整と練習を重ね、6月22日にハーバード大スタジアムで両校が対戦した。慶大が21-19で勝利し、5月の第39回早慶定期戦に続いて連勝した。日本チーム同士の海外の試合は、戦前の1939年5月27日、やはり早慶両校がソウルで対戦して以来2試合目となった。米国最古のフットボール定期戦を行っているハーバード大、イェール大と早慶両チームが親交を深めた。
◆外国チーム間の試合(日本国内開催)
●3回目となる「アメリカンボウル」は8月4日、東京ドームでマイアミ・ドルフィンズとロサンゼルス・レイダーズが対戦し、ドン・シュラ・ヘッドコーチ率いるドルフィンズが19-17で勝利した。
●「第15回コカコーラボウル」は12月1日、東京ドームで開催。守備力を誇るクレムソン大がデューク大に32-21で逆転勝利した。
●「第17回ジャパンボウル」は翌1992年1月12日、会場を東京ドームに移して開催。ジャパンボウル史上7人目のハイズマン賞受賞者としてQBタイ・デトマー(BYU)が22回投11回成功のパスと自らもTDを挙げたが、東軍が4Qに2つのTDで逆転し、東軍が14-13で勝利した。