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INFORMATION ニュース

1992.01.01

1992年(平成4年) 活動59年目

お知らせ

アサヒビール、クラブチーム初の日本一。戦国ムード一気に高まる

日 付 主な出来事
社 会 6月3日 環境と開発に関する国連会議(地球サミット)、ブラジルで開催
6月20日 長浜ドーム竣工
この年より地価は下落をはじめ、その傾向は2005年頃まで続いた
フットボール 3月18日 日本タッチフットボール協会設立
5月10日 第1回オレンジボウル、四国学生選抜-中国学生選抜、サンスター-正英(愛媛県総合運動公園陸上競技場)
6月6日 第1回レディース・タッチフットボール選手権、のちのシュガーボウル(横浜スタジアム)
7月4日 関東大学連盟、第1回安全対策セミナー(東大安田講堂)
9月12日 関東・関西学生リーグ1部リーグ全試合で25秒計使用開始
12月28日 タッチフット女子東西大学王座決定戦(西宮球技場)
翌年1月3日 第46回ライスボウル、アサヒビールが関学大を下し初のクラブチーム優勝
翌年1月9日 第5回アイビーボウル、アイビー選抜-学生全日本、ウィリアム&メアリ大-全日大
翌年1月10日 最後となる第18回ジャパンボウル開催(東京ドーム)

各チームの力が接近し、高校、大学、社会人すべてで競った試合が多くなり、戦国時代の到来と言われ始めた。甲子園ボウルは1949年以来43年ぶりに「赤」も「青」も出場しない対戦に。一方、80年代末からのバブル経済が崩壊し、景気停滞で企業のフットボール支援に陰りが見えてきた。チームの所有や支援は続いたが、ボウルゲームや開催試合に対する協賛企業が減少し始めた。また、76年に第1回を開催したジャパンボウルが第18回大会を最後に幕を下ろした。スター選手の出場で思い出深いボウルゲームだった。

[1]主な出来事

●7月4日、関東大学連盟主催の第1回「安全対策セミナー」が東大安田講堂で開催され、加盟94チームのコーチ、選手、トレーナー、マネジャーら関係者約2,000人が参加した。このセミナーは同連盟理事長・水田吉春氏、安全対策委員会・市川新氏の呼び掛けで中嶋寛之東大教授を中心とする関東大学連盟安全対策委員会の医師ら9人が事例、研究成果、予防など幅広い分野にわたって講演した。発表内容は後日、印刷物で幅広く配布された。この講演会は、翌年以降も開催された。これまで安全対策のセミナーは何回か開催されてきたが、登録選手の参加を義務化し、これだけの規模で開催したのは初めてのことだった。

●関西協会は6月、阪急文化セミナーの一つとして「アメリカンフットボール・フォーラム」を開催。一般を対象にフットボールの魅力や見どころなどを監督、理事、記者らの協会関係者が1時間半の学校セミナー形式で講演や紹介するもので、毎回テーマを変えて全体が5回で完結するセミナーだった。このフォーラムは好評を博し、翌年の春と秋にも開催された。

●日本社会人協会は3月に開催した「西日本社会人選手権」の各会場で、少年フットボール教室を開催した。開催場所は福岡、広島、岡山、愛媛、岐阜で、各回20~50人の少年少女が初めてフットボール競技を体験し、好評だった。

●日本協会加盟チームの登録選手数は、日本フットボール90年の歴史でこの年が最多だった。内訳は以下の通り。

中学校 高 校 大 学 社会人 合 計
チーム数 4 119 221 80 424
登録人数 173 5,120 11,628 3,762 20,683

●関東大学連盟では、関東審判部出身の水田吉春氏(立大OB)が理事長に就任した。

●この頃は、テレビでフットボールの試合が盛んに放映された。国内外のボウルゲーム以外にレギュラーシーズンの試合も多く放映された。キー局などでのこの年の放映は以下の通り。

・NHK-BS:NFLのシーズン開始から終了まで毎週4~5試合を放映。深夜に再放送。プレーオフ、チャンピオンシップ、スーパーボウル(生中継)も放映。ライスボウル生中継
・日本テレビ:毎週水曜深夜にNFLを2試合放映。10月以降は土曜も放映。プレーオフ、チャンピオンシップ、スーパーボウルも放映。関東高校選手権を深夜録画放映
・TBS:9~11月に米カレッジを毎週放映。コカコーラボウル、ジャパンボウル中継
・テレビ朝日:東京スーパーボウルを当日深夜放映。ローズボウルを深夜放映
・テレビ東京:9~11月に社会人リーグ約10試合、パルサーボウル、カレッジ東ソーボウル放映
・テレビ埼玉:関東大学リーグ2試合を生中継、11試合録画放映
・毎日放送:関西学生リーグ全28試合をハイライトで放映
・読売テレビ:関学大-京大、立命大-関大を生中継。深夜時間帯に関西学生リーグ数試合放映
・関西テレビ:関西学生リーグを深夜時間帯に放映。社会人ファイナル4の中継
・その他:関西の朝日放送、テレビ大阪、NHK大阪でも関西学生リーグを随時放映

[2]競技施設・装具・公式規則

◆競技施設

●滋賀県長浜市に長浜ドームが完成。周囲に流雪溝を設けた座席数1,700のドーム型球技場で、開場記念行事として「第42回長浜ひょうたんボウル」(旧長浜ボウル)を開催。関学中-長浜西・南中連合、関西大倉高-滋賀県高校選抜、立命大-同大の3試合が行われた。第3試合は同大が21-17で立命大に5年ぶりに勝利した。

 

◆防具・装具

●関東大学リーグ、関西学生リーグとも、この年の秋から1部リーグの試合に25秒計を設置。チーム、観客がプレー開始までの残り時間が分かるようにした。

 

◆公式規則

【この年の日本の主な規則変更】

●ゴールポストの幅を23フィート4インチから18フィート6インチへ狭くした。
●ファンブルを守備側がリカバーした場合は、どこでリカバーしても走り返せるようになった。

 

[3]春季試合

◆春季試合(学生)

●東西学生1部リーグでは専大、関学大が優勝した前年の結果から「戦国時代の到来」と言われ、春から実力伯仲の試合が相次いだ。大学王者の関学大は日体大と立命大に敗れたが「第6回ヨコハマボウル」では日大に28-10で快勝。関東王者の専大は日大に0-55と完敗し、京大にも24-41で敗れ、不安を残したまま春を終えた。

復活を期す日大はアサヒビールと関学大に敗れて不安なスタートとなり、大量の卒業生を出した京大も成績は芳しくなかったが、若手の成長で安定度は上々。東海大は日体大、早大、立命大に勝利したほか、5月に13年ぶりに来日した韓国学生選抜チームと東京で対戦し、62-0で一蹴した。

●関西ではメンバーが若返った立命大が接戦ながら京大、関学大、神戸大に勝ち、秋の有力な優勝候補と見られた。「早慶定期戦・サンフラワーボウル」は早大が38-10で4年ぶりに勝利した。

 

◆春のボウルゲーム

●第38回西日本選手権

「第38回西日本社会人選手権」は史上最多の37チームが参加。決勝は5月31日に西宮スタジアムに6,000人の観客を集め、前年秋に西日本を制したサンスターが、2年ぶり3度目の制覇に燃えたジャヴァと対戦した。1Q、ジャヴァが先制するが、サンスターは2QにTB山下久行の85ヤードTDランで追い付き、さらに3QにQB芝川龍平の34ヤードTDランなどで突き放し、24-14で春季2連覇を遂げた。

●第38回西宮ボウル

「第38回西宮ボウル」は6月27日、西宮スタジアムで22,000人の観客を集めて開催。前半は17-17の同点で折り返し、3Qに関東がRB須黒浩(専大四年)の2TDで突き放すと、関西も追い上げたが、関東が30-27で接戦を制した。

RB堀口靖(立命大四年)の独走TD、須黒浩(専大四年)と井場睦之(神戸大三年)の力強い走り、WR関智弘(日大四年)のスーパーキャッチ、RB児玉靖彦(明学大四年)のビッグリターンなど、オールスター戦らしい見せ場がいくつもあった好試合だった。

●第6回ヨコハマボウル

「第6回ヨコハマボウル」は5月7日、横浜スタジアムに18,000人の観客を集めて開催された。

・第1試合のともにヨコハマボウル初出場の東海大と立命大は、1Qに立命大がFGとTDランで10点をリード。東海大はQB辻治人(四年)を中心にラン、パスで攻め、4Qに逆転して21-17で逆転勝ちした。
・第2試合の京大-専大は京大が開始早々、RB吉田昌弘(二年)の67ヤードTDランで先制。ウィッシュボーン体型で攻める専大はK丸茂雄二(四年)の39ヤードFGとQB頓宮英彦(四年)からWR渡部軌大(三年)への52ヤードTDパスで逆転。その後もシーソーゲームとなったが、京大は3、4QにRB白井敬祐(三年)の10ヤードTDラン、QB金岡禧友(四年)の37ヤードTDラン、吉田の82ヤードTDランなどで引き離し、41-24で勝利した。
・第3試合の関学大-日大は、3Qまで日大がTDとFGでリードするが、関学大が4QにRB道場圭三(三年)の36ヤードTDラン、QB大矢邦雄(四年)の22ヤードTDラン、RB前島純(二年)の44ヤードTDランで21点を挙げ、28-10で勝利した。

●第17回パールボウル

「第17回パールボウル」は6月12日、東京ドームで48,000人の観客を集めてオンワードと初出場の富士通が対戦。2Q3分、オンワードがRB山口一利の3ヤードのTDランで、前半を7-0で折り返す。

オンワードは後半も、この年5人中4人が入れ替わったライン陣のT近藤康隆、G村井治彦、C巽隆太、G秋濱直治、T長井宗将が押して着実に前進し、QB須永恭通のTDランとTDパスで加点。オンワードが28-0で完封勝利した。

25チームが参加した「ジュニア・パールボウル」は、さくら銀行が三武を14-7で破り、1部復帰へ体制が整いつつあることを感じさせた。

●岐阜県の長良川球技メドウで行われた3位決定戦「キンシャチボウル」は住友銀行と日本電気が対戦した。試合終了2分前に、日本電気が審判の判定への不満を理由に試合を放棄。没収試合となり、試合後、協会は日本電気にチーム対外活動停止などの処分を科した。

●5月10日、「第1回オレンジボウル」が愛媛県総合運動公園陸上競技場で、四国学生選抜-中国学生選抜、サンスター-正英の対戦で開催された。

 

[4]秋季試合

◆秋季試合(学生)

■関東(学生)

●関東大学1部リーグは前年同様、千葉マリンスタジアム、駒沢陸上競技場、駒沢第二球技場、東京ドーム、等々力陸上競技場、川崎球場に新たに江戸川区陸上競技場を加えて開催した。スタンドのある運動施設の利用が増え、2部リーグも有料試合が多くなった。

Aブロックは9月12日に開幕。前年優勝の専大が初戦で上智大に敗れ、続く筑波大にも13-16で2敗となり優勝争いから脱落する波乱の幕開けとなった。オプション攻撃とリアクションのよい守備を持つ法大と、ベテランQB辻治人(四年)が積極的にリードする東海大が、ともに序盤から3連勝。全勝対決は、法大が巧みなボールコントロールと守備ラインの活躍で14-10と逆転勝利し、優勝戦線のトップに躍り出た。

その後、法大は筑波大にも勝ち、最終戦の専大には敗れたもののブロック優勝を飾った。東海大は接戦が多かったが、守備が安定して5勝1敗で同率1位。専大は相手校のマークがきつく、筑波大にも敗れて3勝3敗。1部3年目の東大はQB田原謙一郎(四年)、TE米沢朋通(四年)らの活躍で上位校を苦しめたが、3勝3敗で同率3位にとどまった。上智大は初戦の勢いを持続できずに5位。筑波大は入れ替え戦で成蹊大に快勝して残留したが、明学大は桜美林大に敗れて2部降格となった。

Bブロックも開幕節で慶大が中大に敗れる波乱のスタートを切った。復活を期す日大は、日体大に苦戦の末9-6で辛勝。QB鈴木和佳(二年)を中心としたショットガン攻撃が安定せず、早大には快勝したものの、慶大には27-33で逆転負け。日大は最終節の明大戦に大勝し、慶大が早大に敗れた結果、6勝1敗でブロック優勝を果たした。

慶大は第2節以降4連勝して2年ぶりのブロック優勝を目前にしたが、早大に力負けして2位となった。早大は日体大と日大に敗れて早々と優勝戦線から脱落。ライバル慶大には意地を見せたが、4勝2敗の2位にとどまった。日体大は初戦の明大戦を落とし、続く日大にも粘り負けして優勝戦線から後退。早大と中大に勝つ地力を見せたが4位に終わった。1部3年目の中大はRB笹川隆之(二年)、DT平石隆(四年)の活躍で明大と立大に勝ち、3勝を挙げて1部中位に食い込む健闘を見せた。明大は日体大と立大に連勝して好調なスタートを切ったが、後が続かずに第3節以降4連敗で、全敗の立大とともに入れ替え戦に回った。入れ替え戦で立大は東洋大を大差で下したが、明大は帝京大から試合の主導権を奪い返せずに30-21で敗れ、1981年の1部2ブロック制採用後、初の2部降格となった。

●第23回関東大学選手権

「第23回関東大学選手権・パルサーボウル」は選手権では初めて東京ドームを使用。33,000人の観客を集め、法大と日大が対戦した。1Qに日大が先制TDを挙げたが、その後はランプレー中心の法大が多彩な攻撃パターンを展開。2QにRB深瀬新市(四年)の2つのTDランとFGで17点と一気にリードした。後半もバックアップQB嶋秀行(四年)や主将LB鈴江貴之(四年)を中心とする守備陣の健闘で、34-20で勝って20年ぶりの甲子園ボウル出場を決めた。法大が甲子園ボウル出場常連校になる最初の年だった。日大が2年連続で甲子園ボウル出場を逃したのは1976年以来16年ぶり。

 

■関西(学生)

●関西学生リーグは約半数の試合を西宮スタジアムで開催し、ほかに長居球技場、宝ヶ池球技場を使用した。

この年も混戦となった。前年優勝の関学大は、2019年まで28年間監督を務めることになる鳥内秀晃氏が就任。QB大矢邦雄(四年)のパス、RB前島純(二年)のラン、NG谷嶋淳(三年)、DT大村和輝(四年)のいるフロントやCB野村昌弘(三年)ら充実したDB陣などの活躍で、序盤は下位校に大勝。中盤戦も神戸大と同大を難なく下し、開幕から5連勝とした。しかし、大矢らが負傷で戦列を離れると得点力が落ち、立命大には10-17で逆転負け。最終の京大戦には大矢が復帰したが、パス攻撃を京大の積極守備に阻まれて2敗目を喫し、連覇を逃した。

立命大は有力な優勝候補と目され、難敵神戸大は破ったものの、中盤で同大に完敗。京大には終了寸前で逆転を許して優勝争いから脱落した。通算1,000ヤードを走った堀口靖(四年)の活躍など、個人の能力では抜きん出ていたが、頂点に立つことはできなかった。

京大はここ2年で力を付けてきた神戸大に7-21と完敗。1敗同士で迎えた最終の関学大戦は大観衆で埋まる西宮スタジアムで行われた。関学大が1QにTDで先制したが、京大はQB金岡禧友(四年)を中心とする多彩な攻めとSS関康次郎(四年)ら守備陣の活躍で逆転し、21-10で勝利した。京大は前年の同率優勝を含めて3年連続8回目のリーグ優勝で、2年ぶり6回目の甲子園ボウル出場を決めた。

神戸大はRB井場睦之(三年)、DT川野友裕(四年、主将)らスター選手がおり、開幕から上位4校と対戦するスケジュールで台風の目と見られたが、同大と京大に快勝しながらQB河田晃一(四年)や井場らの怪我が響いて立命大と関学大に敗れた。結果的には5勝2敗で同率2位を確保。初戦で神戸大に大敗した同大はその後、立命大を破るなど3連勝したが、関学大に完封されて優勝戦線から脱落し、4勝3敗で5位に甘んじた。

これまでの関学大、京大の2強時代から関学大、京大、立命大の3強時代の始まりだった。

 

■各地区(学生)

【北海道】 優勝決定戦は3年ぶりの全勝対決となった「第9回円山ボウル」(1部リーグ最終戦)で、札幌学院大と北大が対戦。過去最高の3,000人の観客が集まった。逆転に次ぐ逆転の好試合となり、札幌学院大がRB谷口聡(三年)の80ヤードのキックオフリターンTDなどで30-21と勝利した。
【東北】 10月17日、それまで1敗の東北大と全勝の東北学院大が対戦。勝者がリーグ優勝する試合を東北大が21-7で制した。東北大は初戦で仙台大に敗れ、この3者が1敗で並んだが、大会規定で東北大が1位となった。
【東海】 中京大と名城大の最終戦が優勝決定戦となり、中京大が1Q、杉浦正典(三年)の70ヤードのパントリターンTDで先制。さらにK遠藤直(四年)のFGで追加点を挙げ、16-13で接戦を制した。
【北陸】 新たに加盟した北陸大と富山大を加えた8チームが2ブロックで対戦。両ブロックの1位の金沢大と金沢医大の優勝決定戦を金沢大が41-6で制し、5連覇を飾った。
【中四国】 両ブロック1、2位の4チームでトーナメント戦を開催。準決勝で松山大を破った広島大と愛媛大を破った山口大が決勝に進み、前半のリードを守った山口大が広島大を制し、優勝した。
【九州】 リーグ最終戦で九大と西南学院大が全勝対決。九大は1Q、CB長町剛(四年)がインターセプトして得た攻撃権からTDランで先制。以降も西南学院大の反撃を抑えて21-7で勝利し、全勝優勝した。

 

●「東日本学生王座決定戦・第7回パインボウル」は11月3日、宮城陸上競技場で2年連続の東北大と札幌学院大が対戦した。東北大は最初のシリーズでRB大島達樹(四年)の12ヤードのTDランで先制。前半は東北大が7-0とリードして終えた。

3Q、東北大はTDランで14-0とするが、札幌学院大もRB谷口聡(三年)のロングランから最後はQB大滝陽呂喜(三年)がキープしてTD。さらに残り時間8秒で東北大陣10ヤードに迫ったが、最後のパスを東北大DB田畑敬史(二年)にエンドゾーンでインターセプトされ、東北大が14-7で勝利した。

●「西日本学生王座決定戦・第8回平和台ボウル」は11月3日、博多の森陸上競技場で九大と山口大が対戦。1Q、山口大はインターセプトから得た攻撃をTDに結び付けて先制点を挙げるが、九大もTDで追い付き、競り合いとなった。その後、互いに得点を重ね、4Qに九大はQB松田幹秀(四年)がエンドゾーンに走り込んでTDし、24-13と差を広げた。山口大は4Q13分にTDパスを決め、2点のTFPも成功して21-24と3点差に迫ったが、その後のオンサイドキックで攻撃権を取れずに試合終了となった。

●「第7回地区対抗学生王座決定戦」は11月21日、東京ドームでそれぞれ部員数80人の東北大と九大が対戦。九大はラン&シュートの攻撃を展開し、2Q初めまでにRB下瀬健(四年)の26ヤードラン、QB松田幹秀(四年)からWR塩塚雄二(四年)への16ヤードパスの2つのTDでリードした。東北大はその後、QB本田啓二(二年)が13ヤード、1ヤード、3ヤードの3つのTDランを挙げて21-12と逆転。九大は3Q終了間際に松田の7ヤードTDランで3点差に迫るが、東北大は4QにK千田諭(四年)が33ヤードFGを決めて突き放し、24-18で3連覇を遂げた。

 

◆秋季試合(社会人)

●社会人東日本は東京ドームを10日間使用し、川崎球場、江戸川区陸上競技場なども使用した。西日本は西宮スタジアムを中心に、長居球技場などを使用した。

 

■秋季試合 関東(社会人)

●波乱の幕開けとなった。鹿島が古豪レナウンを破る番狂わせでスタートしたAブロックは、アサヒビールとリクルートが引き分け、優勝争いが得失点差で決する気配が濃厚となった。結局、攻守に安定したアサヒビールが4勝1分で、得失点差ではなく2年連続のブロック優勝を飾り、リクルートが2敗で2位。鹿島、レナウン、日本電気が2勝3敗で並んだ。春に躍進した住友銀行は鹿島に勝利したが1勝5敗で入れ替え戦に回った。

Bブロックは中盤から混迷の色を深めた。三和銀行が王者オンワードを相手に守備が粘って14-6で破る大金星。優勝は1分の富士通、1敗のオンワードと三和銀行の争いになったが、結局は富士通-オンワードの直接対決で決まることとなった。そして、白熱した守備戦の末、富士通が念額の初優勝。1敗を守った三和銀行が2位に浮上し、前年度日本一に輝いたオンワードは2敗で3位。4位には2勝2敗1分の三菱銀行が入り、三菱電機が1勝4敗で5位。日産が入れ替え戦に回った。

●入れ替え戦は、住友銀行がさくら銀行に0-6で敗れて3年ぶりに2部に降格。さくら銀行は3年ぶりに1部に復帰した。日産は内外衣料に41-0で勝利し、残留した。

 

■秋季試合 関西(社会人)

●Aブロックは西日本社会人王者のサンスターが新参のマイカルと引き分ける波乱の幕開けとなった。結局、リーグ優勝はこの両者の得失点差で争われた。サンスターがリーグ前半で大量得点を重ねたが、中盤以降は練習量で上回るマイカルが猛追。最終戦の前までサンスターが210得点、42失点だったのサンスターに対し、マイカルは178得点、33失点。最終戦はマイカルが阪急に104-0という記録的なスコアで勝利し、ブロック優勝を勝ち取った。中位は千趣会とイワタニが2勝3敗で、富士ゼロックスと阪急が1勝4敗で並んだ。

Bブロックは松下電工が攻守とも圧倒的な戦力で独走。全勝対決となったジャヴァ戦も、相手の自減を誘って完勝した。ミキハウスは3勝2敗で3位。名古屋は2勝3敗で4位。最下位対決となったNACL-正英はNACLが20-10でNACLが勝利した。入れ替え戦は阪急が日本電装を14-12で破って残留。正英はセリオに6-13で苦杯を喫し、降格となった。

●12月8日、女子フットボールの親善試合、「第2回クイーンボウル」が、長居球技場で大阪興銀ワイルドキャッツ-第一生命レディコングで行われた。第一生命が大阪興銀を破り、対戦成績を1勝1敗とした。MVPは第一生命の主将・長谷川尚子が選ばれた。

 

■プレーオフ(社会人)

●「東日本代表決定戦・ファイナル4」はアサヒビールと富士通の初顔合わせとなった。試合を決めたのは、アサヒビールTB野村貴のランと守備陣の粘り。アサヒビールが22-14でリードした終了直前、富士通はゴール前4ヤードまで攻め入ったが、第4ダウンギャンブルのパスが失敗して万事休す。アサヒビールが3年ぶり2度目の東京スーパーボウル進出を決めた。

●「西日本代表決定戦・ファイナル4」は松下電工が今季最少得失点差だったが、マイカルに36-0で完封勝ちし、東京スーパーボウル出場を果たした。

 

[5]秋季試合(ボウルゲーム)

◆第47回甲子園ボウル

●「第47回甲子園ボウル」は12月13日、試合開始前に降り出した雨が強くなった中、甲子園球場に38,000人の観客を集めて京大と法大が対戦した。逆転また逆転の白熱したシーソーゲームを展開。京大が粘り強いボールコントロールと激しいラッシュで20年ぶりに出場した法大を17-7で破り、5年ぶり4回目の優勝を果たした。

パスが投げにくい雨中の熱戦。法大は先発QB末廣克祉(四年)が効果的にパスを決めて京大陣に入った後、9分にUB深瀬新市(四年)の10ヤードTDランで先制。しかし、2Q以降は法大の巧みなオプション攻撃に対し、京大はブリッツ多用による果敢なラッシュで対抗。悪天候もあって法大の攻撃は持ち前のスピードを生かせず、キッキングゲームもいま一歩で、京大に好位置からの攻撃を許した。

京大QB金岡禧友(四年)はC坂本真樹(二年)らのラインに守られ、冷静かつ大胆なリードで相手ゴールラインに迫った。2Q11分、金岡がSE飯島尚(四年)へ5ヤードのパスを通してTDとし、同点に。さらに、前半最後のプレーでK溝田圭一(二年)の21ヤードFGで勝ち越した。後半は法大の反撃をDT柳宏樹(四年)、SS関康次郎(四年)の守備陣がよく守った。金岡は23回のランで91ヤードを獲得し、1TDの活躍。金岡がミルズ杯と甲子園ボウル最優秀選手を受賞し、4年ぶり3人目のダブル受賞となった。

 

◆第6回日本社会人選手権・東京スーパーボウル

●「第6回日本社会人選手権・東京スーパーボウル」は東京ドームに46,000人の観客を集めて行われた。1989年社会人覇者のアサヒビールと、その翌年の覇者松下電工の一戦はハードヒットの応酬で好ゲームとなった。アサヒビールが14-7とリードして迎えた後半、互いにターンオーバーがあったの後、アサヒビールのRB野村貴がTDして21-7で3年ぶり2度目のライスボウル出場を決めた。最優秀選手は2TDの野村が選ばれた。

 

◆第46回ライスボウル

●日本選手権となって10回目の「第46回ライスボウル」は翌1993年1月3日、東京ドームで過去2回出場のアサヒビールと4回目出場の京大が対戦。アサヒビールが勝利し、クラブチームで初めて日本一の座に就いた。アサヒビールは東日本1部リーグ12チーム中、唯一のクラブチームで選手50人、スタッフ35人の勝利だった。京大はライスボウルで初めて敗れ、4回目の日本一はならなかった。

京大が強力なアサヒビール攻守を向こうに前半を14-13とリードして折り返す健闘。しかし、アサヒビールは3Q2分、QB東海辰弥からRB天花寺正巳への2ヤードTDパスで逆転。さらに11分、RB野村貴の8ヤードTDランで突き放し、攻守に安定した力を発揮したアサヒビールが29-20で勝って社会人2連覇を達成。対戦成績を社会人の3勝7敗とした。アサヒビールは京大QB金岡禧友(四年)にパスで319ヤードを奪われたが、4回のインターセプトで断ち切った。MVPのポール・ラッシュ杯はパス・ラン合計で大会記録となる240ヤードを獲得した野村が受賞した。

 

◆その他のボウルゲーム

●「第3回東西学生ジュニア・オールスター戦」は3部で関西が関東を27-14で破り3連覇。2部は関東が関西を27-6で破って初勝利を収めた。「東西学生オールスター戦・カレッジ東ソーボウル」は東軍が27-15で勝利を収め、前年の雪辱を果たした。

 

[6]高校フットボールの活動

◆春季大会(高校)

●「第18回春季関東高校選手権」は準決勝で都立西高(東京4位)を20-0で破った中大付高(東京1位)と、都立戸山高(東京2位)に15-14で逆転勝ちした法政二高(神奈川1位)が決勝で対戦し、中大付高が20-7で勝って優勝した。

●「第22回春季関西高校選手権」は準決勝で崇徳高(広島1位)を44-10で破った大産大付高(大阪1位)と、市立柴野高(京都1位)を56-0で下した関西大倉高(大阪2位)が決勝で対戦し、関西大倉高が31-29で逆転勝ちし、優勝した。

 

◆秋季大会(高校)

■関東地区(高校)

●「全国高校選手権関東地区」決勝は11月15日、駒沢第二球技場で法政二高と日大三高が対戦。1Q2分、日大三高が8ヤードTDランで先制したが、春からウィッシュボーン体型でのフリーズオプションを軸にしてきた法政二高が1Q7分に同点とすると、その後は安定した試合展開で30-15で勝利し、3年ぶりに全国大会決勝に進んだ。

 

■関西地区(高校)

●「全国高校選手権関西地区」決勝は11月22日、西宮球技場でランプレー主体の関西大倉高とパスプレー主体の関学高が対戦。総獲得ヤードは両チームほぼ互角だったが、関西大倉高が4つのインターセプトを奪うなど終始有利に進めて36-10で勝利。2度目の関西制覇を遂げた。

 

◆第23回全国高校選手権決勝・クリスマスボウル

●「第23回クリスマスボウル」は12月23日、長居球技場で法政二高と関西大倉高が4年ぶりに対戦。法政二高は1Q4分、この日3つのTDを挙げたFB久保田裕彦(三年)の8ヤードTDランで先制すると、G板橋虎志(三年)を中心としたラインの活躍でその後も順調に加点。10TDを挙げて67-19で勝利し、3年ぶり3回目の高校チャンピオンとなった。

 

[7]フットボール・ファミリーの活動

◆タッチフットボール

●3月18日、「日本タッチフットボール協会」が設立され、「第1回レディース・タッチフットボール選手権」(後の「シュガーボウル」)の開催が発表された。同協会は日本におけるタッチフットボールの普及や振興と、スポーツを通じた相互理解などを目的に設立。理事長には富田勝慶大助教授が就任した。

4月に3回にわたって女子タッチフットボール講習会を開催するとともに、創立記念行事として6月6日に横浜スタジアムで「第1回レディース・タッチフットボール選手権」を開催。52チームが登録し、予選会には32チームが参加。女子は慶応ブレークスが優勝した。慶応ブレークスは、9月に米カーネギーメロン大の「ウィメンズリーグ」に参加し、4勝1敗の好成績を挙げた。オープン(男子または男女混合)は外人ゲイターズが目白台スラッカーズを破り、優勝した。

●11月28日、西宮球技場でタッチフットボールの「第1回女子東西大学王座決定戦」が開催され、4大学が出場した。準決勝(1回戦)で関学大クレセンツが慶大ブレークスを53-35で、聖和大カプリシャスエンジェルスが成城大ブルックスを40-12でそれぞれ破って決勝に進み、決勝は聖和大が関学大を34-6で破り、初代女王の座に就いた。

 

◆プライベートチームの活動

●クラブチーム13チーム、約500人の選手が登録する江戸川区フットボール連盟主催の「第1回アーバンボウル」が江戸川区陸上競技場で開催された。

●翌1993年2月21日、横浜スタジアムで「日本プライベートフットボール協会創立15周年記念交流戦・横浜フェスタボウル」が、気温3度の厳寒の中で開催された。

第1試合は日本プライベート協会選抜Aと西日本プライベート連盟選抜が対戦。14-7で日本プライベート協会選抜Aが14-7で勝利し、MVPにはWR森田修(所沢アウトローズ)が選ばれた。

第2試合は日本プライベート協会選抜Bと長野アメリカンフットボール協会選抜が対戦。日本プライベート協会選抜Bが12-0で勝利し、MVPにはQB山下直也(立川ファルコンズ)が選ばれた。

 

[8]海外・国際関連の活動

◆日本チームの活動(国内開催)

●毎年初夏開催の「平成ボウル」は7月4日、西宮スタジアムで行われた。この年から日本の2チームは両チームとも関西学生リーグ所属のチームとなり、前年同様の関学大にワシントン大のチームと、京大にBYUが加わったチームが対戦。関学大・ワシントン大チームが10-8で勝利した。

この年以降毎年、関西学生リーグのチームに米国チームが加わる形式で行われ、関学大、京大、立命大に米国強豪校が参加し、2001年まで12回続けられた。02年から日本のチームは単独チームではなく、関西学生リーグ所属の大学から大学単位でチームを分け、そこに従来通り米国の大学チームから参加する形態とし、試合の名称も新しい時代を迎えるものとして「ニューエラボウル」とした。

●「第5回アイビーボウル」は翌1993年1月9日、東京ドームで日本学生選抜-アイビーオールスター、全日大-ウィリアム&メアリ大(W&M大)の2試合が行われた。2試合の開催はこの年だけだった。

第1試合の日本学生選抜は、日大を除く関東・関西から選抜されたチームで、4回目となるアイビーオールスターと対戦した。これまでの大会での日本チームの戦いぶりから、日本の健闘が期待され、攻撃チームの編成を初めて東西のプレーヤーによる混成ユニットとした。しかし、最初から全力で向かってくるアイビーチームの迫力に押され、得点チャンスも少なく一方的な展開となり、アイビーチームが68-3で圧勝した。

第2試合はこの頃に盛んに活動していた社会人チームに所属する若手日大OB42人と現役選手で編成した全日大が、第1回アイビーボウルの出場のW&M大と対戦。W&M第はこの年が大学創立300周年だった。

W&M大はNCAAランキング114位と、トップクラスではないが強豪校だった。全日大は攻撃はショットガン、守備は4-3でパワーあふれる相手に立ち向かった。1Qは互いに無得点。日大は2Qに相手に4TDを許したが、QB宇田川健治(鹿島)、山田喜弘(オンワード)、WR梶山龍誠(三和銀行)らの攻撃で2TD、2FGを奪う健闘を見せた。結局、35-19で敗れたが、米国を相手に日本のレベルが向上していることを証明し、アイビーボウル史上最少得点差に、多くの観客が拍手を送った。

 

◆外国チーム間の試合(日本国内開催)

●4回目となる「アメリカンボウル」は8月2日、東京ドームで行われ、ヒューストン・オイラーズとジミー・ジョンソン・ヘッドコーチが率いるダラス・カウボーイズという、テキサス州を本拠とする2チームの「クロスタウン対決」はオイラーズが34-23で勝利した。NFLは日本滞在中に日本のチーム関係者向けのクリニックを織田フィールド(東京・渋谷)で開催し、有意義な催しとなった。

●「第15回コカコーラボウル」は12月6日、東京ドームで名門ネブラスカ大とカンザス州立大が対戦。ネブラスカ大が38-24で勝利し、オレンジボウル出場の道を切り開いた。

●1976年1月に第1回大会が開催され、18年間行われてきた全米学生選抜の「ジャパンボウル」は、この93年1月10日が最後となった。全米級の選手のプレーを目前で見ることができた最後の一戦は、西軍が東軍を27-13で破った。

18回の開催で来日した選手は約1,200人で、コーチやチアリーダー、NCAAをはじめとする大学関係者などはその数を上回った。数々の全米オールスターやハイズマン賞受賞者が来日。日本の観客にアメリカンフットボールの醍醐味や華々しさを披露した。18回の試合は日本のフットボールファンを増やした印象に残るボウルゲームだった。この最後の大会、日体大が5回目となるエッサッサをハーフタイムで披露。西軍12勝、東軍6勝で終了した。