前年、第1回ワールドカップ優勝で実力を示した日本フットボールだが、経済状況の悪化と少子化により、活動が徐々に苦しくなってきた。経済状況の悪化は主として社会人チームの活動に影響を与え、少子化は高校、大学の部員数減少となってきた。高校では部の存続のために複数校の合同チームの公式戦参加を認め、大学では新たに7人制フットボールを採用するなど工夫した。経済状況の悪化と少子化はその後も長い間続いた。
2000.01.01
お知らせ
アサヒ飲料が初の日本一、社会人5連勝
日 付 | 主な出来事 | |
社 会 | 3月31日 | 川崎球場閉場(野球場としての役割終了)、9月3日:さいたまスーパーアリーナ開場 |
6月13日 | 朝鮮半島分断後55年で初の南北首脳会談 | |
7月21~23日 | 第26回サミット(主要国首脳会議)、沖縄県名護市で開催 | |
10月8日 | 千代田生命保険破綻。10月20日:協栄生命保険破綻 | |
12月1日 | BSデジタル放送スタート | |
12月30日 | 世田谷一家殺害事件 | |
フットボール | 4月 | 全国各地でフラッグフットボール指導者講習会開催 |
5月1日 | 日本協会事務所、東京スタジアム(のちの味の素スタジアム)へ移転 | |
6月17日 | 関東大学連盟、7人制フットボール説明会開催(大井第二)。秋より公式戦開催 | |
7月16日 | 第1回NFLフラッグ日本大会開催(舞州スポーツアイランド) | |
8月16日~ | 第1回NFLフラッグ世界大会開催(カナダ・トロント) | |
12月18日 | 第14回日本社会人選手権、アサヒ飲料、松下電工を下し初優勝(東京ドーム) | |
12月18日 | 日本フラッグフットボール連盟設立、翌1月3日、日本ジュニア選手権開催 | |
翌年1月3日 | 第54回ライスボウル、アサヒ飲料、法大を下し初優勝 | |
翌年1月7日 | 関東高校オールスター戦、「スティックボウル」に改称し開催(等々力野球場) | |
翌年1月 | 関東大学連盟U19、第5回グローバルジュニア選手権に初参加(米国・タンパ) |
前年、第1回ワールドカップ優勝で実力を示した日本フットボールだが、経済状況の悪化と少子化により、活動が徐々に苦しくなってきた。経済状況の悪化は主として社会人チームの活動に影響を与え、少子化は高校、大学の部員数減少となってきた。高校では部の存続のために複数校の合同チームの公式戦参加を認め、大学では新たに7人制フットボールを採用するなど工夫した。経済状況の悪化と少子化はその後も長い間続いた。
[1]主な出来事
●関東大学連盟では少人数のチームが増える傾向を踏まえ、部の存続や現部員の活動継続を目的に7人制フットボールの採用を検討。6月17日に大井第二球技場で競技の説明とデモンストレーションを行った。7人制のリーグ戦は翌2001年シーズンから始めた。
●社会人ではリクルートがリクルートクラブ・シーガルズへ、さくら銀行がクラブ・ダイノスへと、実業団からクラブチームに形態を変更した。
日本の経済状態の悪化に伴い、1990年代前半にボウルゲームの冠スポンサーや後援が減少し、90年代中盤から後半にかけてクラブチームに対するスポンサーの支援中止が多くなってきたが、この頃になってフットボール部を所有する企業の支援撤退や縮小が始まった。
●滋賀県連盟が継続的に開催している「長浜ひょうたんボウル」が50回目を迎えた。4月29日に第50回記念大会を開催。長浜ドームで①長浜南中・西中連合-関学中学部②NFLフラッグフットボール③京大-立命大を行い、50年の歴史を祝った。
●「神戸ボウル」が50回目を迎え、日本社会人協会と関西学生連盟が神戸新聞社を表彰した。
●日本協会加盟チーム(かっこ内は休部中のチームを含んだ数)は中学5、高校109(125)、大学228(231)、社会人80の合計422(441)チーム。登録者数は休部中のチームを含み、高校2,698人、大学9,331人、社会人3,620人の計15,649人で前年比993人減だった(中学の登録者数は不明)。
[2]競技施設・装具・公式規則
◆競技施設
●1991年から関東大学リーグの主会場の一つとして使用されてきた川崎球場は、耐震性の問題から3月31日でいったん使用を休止することになり、これまでの野球場が47年の歴史に幕を閉じた。
フットボールでの初使用は1971年のアサヒビール-在日米軍オールスターで、以降29年間、主として大学と社会人の試合で使用されてきた。同球場は2001年春、フットボール仕様の川崎スタジアムとしてリニューアルオープンした。また、川崎球場の後継グラウンドとして等々力硬式野球場の使用が始まった。人工芝でナイター設備を有し、座席数は3,800。大井第二球技場と駒沢第二球技場も使用した。
●9月3日、さいたま新都心に「さいたまスーパーアリーナが」完成し、記念試合の一環として12月3日の「第31回関東大学選手権」でフットボールが初めて使用した。アリーナ床が可動式で観客席は27,000、人工芝が自動的に敷設される装置が備えられた。
◆公式規則
【この年の日本の主な規則変更】
特になし
[3]春季試合
◆春のボウルゲーム
●第46回西日本選手権
「第46回西日本社会人選手権決勝・グリーンボウル」は5月27日、西宮スタジアムでアサヒ飲料と松下電工が対戦。松下電工が1Q6分にセーフティー、2Q2分にK太田雅宏の17ヤードFGで5点をリードして前半を終了。アサヒ飲料は4Q1分、相手ファンブルをLB荒木将博がリカバーして8ヤードのリターンTDを挙げ、7-5で松下電工に逆転勝ちした。
●第46回西宮ボウル
「第46回西宮ボウル」は7月1日、西宮スタジアムで開催され、第1試合は西日本学生選抜が東海学生選抜に28-10で、第2試合は大阪府高校選抜が兵庫県高校選抜に34-13でそれぞれ勝利した。第3試合の関東、関西の大学選抜戦は、関西が1QにCB伊藤三朗(神戸大三年)の46ヤードのインターセプトリターンTDなどで21点をリードし、24-10で勝利した。MVPは関西のQB岡村幸太郎(関学大四年)が受賞した。
●第14回ヨコハマボウル
「第14回ヨコハマボウル」は5月28日、横浜スタジアムで開催された。
・第1試合の関学大-日大は、日大が1QにTDパスで先制したが、関学大は2Qに4TDラン、1TDパス、1FGで一気に38点を挙げ、4Qにも3TDを加える猛攻で59-7と圧勝した。
・第2試合のアサヒビールと初出場の帝京大は、アサヒビールが危なげなく進め、48-9で勝利した。
・この日、同会場で行われた立命大と東海大の定期戦は、立命大が34-13で勝利した。
●第25回パールボウル
「第25回パールボウル」は6月19日、東京ドームでリクルートと鹿島が対戦した。
過去10回の両者の対戦は、いずれも接戦の好試合。この日も息詰まる守備戦を展開し、2Q早々に鹿島のパスをリクルートの4年目CB玉ノ井康昌がインターセプトから敵陣ゴールライン前4ヤードまで迫ると、最後はQB井上浩樹のスニークで先制TD。鹿島は3Q、TE八百板大とWR志田竜也へのパスで前進し、K中筋圭吾の35ヤードFGで4点差に。さらに鹿島は試合終了6秒前、敵陣29ヤードからヘイルメリーパスを投じたが、これをリクルートCB吉田大介が叩き落とし、リクルートが7-3で勝利した。ハーフタイムショーは、クラシック界に革新をもたらしたバイオリニストの川井郁子氏が出演し、優雅なバイオリンの音色が東京ドームに響いた。
[4]秋季試合
◆秋季試合(学生)
■関東(学生)
●Aブロックは過去6年、関東では敵なしの法大が圧倒的有利との評判だった。しかし、法大は甲子園ボウルでは通算1勝6敗1分で、どうしても破れない壁を乗り越えようと、ラン一辺倒だった攻撃にパスを織り交ぜた多彩なオフェンスへと、大胆な方針転換を図った。開幕の1部に復帰した筑波大にはまだ新しい攻撃に慣れないためか24-0とやや苦戦したが、3戦目で日体大にはQB井川宅朗(四年)の2TDパスなどで34-14と勝利し、続く早大戦では多彩な体型からTB薄衣由素(四年)が4TDを挙げて圧勝した。次の東大戦ではUB白木周作(三年)と薄衣の快足コンビが走り、45-23で勝利し、関東大学選手権出場を決めた。日体大は東大に21-21で引き分けたものの、4勝1敗1分の単独2位で関東大学選手権に進出。東大が3位となった。
実力伯仲のBブロックは専大が関東大学リーグ随一のスピードを生かし、初戦で東海大を13-10で破ると勝利を重ね、日大も関東学院大に33-20とやや接戦となった以外は勝利を続け、両者が第5週で全勝対決。専大、日大ともに譲らず、7-7の引き分けとなった。両者はともに5勝1分で1位となり、関東大学選手権に進出した。
●第31回関東大学選手権
関東大学選手権を「クラッシュボウル」と名付けたプレーオフでは、準決勝の法大-日大は前半リードした法大が、LB志賀隆蔵(四年、主将)を中心に速いつぶしで日大の攻撃を抑えて29-0で勝利。日体大-専大は日体大が相手のパントのミススナップでチャンスをつかんで先制。30-20で勝利した。
決勝は新装のさいたまスーパーアリーナで開催。法大が1QにリバースプレーでTDを挙げ、TFPも意表を突く2点コンバージョンを決めて優位に立ち、前半を22-10とリード。後半はさらに日体大を引き離して65-23で勝利し、7連覇を遂げた。
■関西(学生)
●関西学生リーグDiv.1は9月2日、尼崎陸上競技場のナイター試合、関学大-同大で開幕。西宮スタジアムを主会場に宝ヶ池球技場、長居球技場などを使用した。
攻守のバランスが最も優れていると言われた関学大が、下馬評通りの強さを発揮し、2連覇を果たした。関学大は各試合、攻撃はラインが力強いブロックで相手を圧倒し、ラインが空けた穴を三井進矢(三年)、大谷智之(二年)のRB陣が駆け抜けた。エースに定着したQB岡村幸太郎(四年)のパスも効果的で、リーグ一の得点力を誇った。第5戦の甲南大との全勝対決では、意表を突く甲南大のショットガン攻撃に守備が混乱し、主力選手の負傷欠場もあって一時リードを許したが、逆転してその後も加点して49-28で勝利した。次の京大との全勝対決は、総獲得距離で京大を下回ったが、守備が4回のファンブルリカバーをもぎ取り、45-14で勝利した。
最終の関学大-立命大は西宮スタジアムに25,000人の観客を集めて開催。3Q終了まで両軍無得点の守備戦となった。関学大は4Q、K山路新太郎(四年)のFGで先制。RB三井進矢(三年)の30ヤードTDランで10-6とし、全勝優勝を遂げた。立命大は京大に敗れており3位。京大が2位となった。4位は甲南大。
■各地区(学生)
【北海道】 北大と札幌大の争いは、北大が21-7で勝ち、優勝した。
【東北】 前年優勝の岩手大と東北大が全勝対決。後半に東北大が2TD、1FGで岩手大を突き放して23-0で勝利し、優勝した。
【東海】 名城大に僅差で勝利して全勝の中京大が、躍進著しい1敗の南山大と対戦。中京大が26-7で勝ち、4年ぶり11回目の優勝を果たした。
【北陸】 10月29日、金沢市営球技場での最終戦で金沢大と前年健闘して2位となった福井工大が対戦。金沢大が47-0で圧勝し、全勝でリーグ7連覇を達成した。
【中四国】 10月28日、最終戦で広島大と愛媛大が全勝対決。広島大が前半を17-7のリードで折り返し、4Qにも追加のTDを挙げて24-7で勝ち、2年連続の優勝を遂げた。
【九州】 10月28日、最終戦で全勝の九大が2敗の福岡大と対戦。九大は3Q終了時点で福岡大に7-14とリードされたが、パントフェイクからのTDで14-14の同点に持ち込み、九大が4勝1分で3連覇を遂げた。
●「第4回北日本学生王座決定戦・第15回パインボウル」は11月26日、仙台スタジアムで行われ、東北大が北大を24-21で破った。
●「第4回南日本王座決定戦・第16回平和台ボウル」は11月19日、博多の森陸上競技場で広島大と九大が2年連続で対戦。九大が1Q終盤にQB倉前佑介(二年)のTDランで先制。RB坂下基(四年、主将)が27回のランで223ヤード、2TDを挙げる活躍で28-0で勝利し、3年連続6回目の優勝を遂げた。
●「第4回東日本学生王座決定戦・シトロンボウル」は12月10日、仙台スタジアムで行われ、関東準優勝の日体大が東北大に54-24で勝利した。
●「第4回西日本学生王座決定戦・ウエスタンボウル」は12月10日、博多の森陸上競技場で行われ、関西2位の京大が九大を78-10で破った。
◆秋季試合(社会人)
●Xリーグは「オールXリーグ」の選出を開始した。
■秋季試合 関東(社会人)
●Xリーグイーストは近年力を付けてきた富士通が、開幕戦でレナウンに7-0で勝利。続くオンワード戦も守備陣が健闘して14-7で勝ち、すかいらーくにも28-27で接戦をものにし、5戦全勝で1位となった。アサヒビールが富士通に敗れたものの、4勝1敗で2位となり、富士通とともにFINAL6の出場権を得た。レナウンは全敗で最下位の6位となった。
●セントラルはXリーグで2回王者となっているリクルートが、東京海上にやや苦戦したものの、5戦全勝で1位となった。鹿島と日産プリンスが3勝2敗で並んだが、直接対決で勝った日産プリンスが2位でFINAL6の出場権を得た。
■秋季試合 関西(社会人)
●Xリーグウエストは西宮スタジアム、西宮球技場、長居球技場などを使用した。前年FINAL6出場を逸した松下電工は、最終戦で井内盛栄堂に敗れたが、4勝1敗で1位となった。2位はアサヒ飲料で、両チームがFINAL6に進んだ。
■プレーオフ(社会人)
●FINAL6では1回戦でアサヒ飲料とアサヒビールの兄弟対決となり、前半は0-0で折り返した。3Q、アサヒ飲料はQB桂雄史郎からRB中村多聞への12ヤードTDパスで先制。これが決勝点となり、アサヒ飲料が7-0で準決勝に進んだ。
富士通-日産プリンスは前半互いに1TDを挙げて7-7で折り返したが、後半、富士通がQB木之下祐士のTDパスとRB森本裕之の独走TDランで突き放し、24-7で勝利した。日産プリンスは富士通QBのシグナルに惑わされ、7つのエンクローチメントの反則が響いた。
●準決勝のアサヒ飲料-リクルートは、1QにリクルートがFGで先制したが、アサヒ飲料は2Q中盤にインターセプトからチャンスをつかみ、最後はRB中村多聞が5ヤードのTDランで逆転。その後も着実に加点して23-15で勝利し、東京スーパーボウルへ進んだ。
もう1試合は富士通がTDパスで先制したが、松下電工が前半終了間際に同点とし、さらに後半に2TDを挙げて21-7で勝利した。富士通はQB木之下祐士の負傷交代が痛かった。
[5]秋季試合(ボウルゲーム)
◆第55回甲子園ボウル
●「第55回甲子園ボウル」は12月17日、甲子園球場に23,000人の観客を集め、法大(大森広行監督)と関学大(鳥内秀晃監督)が対戦。8年ぶりの雨中戦となったが、スピードあるランに効果的なパスを交えた攻撃を見せた法大が、関学大のミスにも助けられて28-21で競り勝ち、3年ぶり3回目の優勝を果たした。単独優勝は初優勝した1972年以来28年ぶりで、関西勢の連勝を8で止めた。
法大は1Q3分、関学大のファンブルから得た攻撃でRB小高敦之(四年)の1ヤードTDランで先制。同点で迎えた2QにもRB薄衣由素(四年)の59ヤードTDランで14-7とし、前半を折り返した。
関学大は3Q3分、QB岡村幸太郎(四年)が2ヤードを持ち込んでTDし、続いてRB大谷智之(二年)の2ヤードTDランで21-14とリードを奪った。
しかし、法大は4Q2分、RB薄衣のこの日二つ目のTDランで同点。さらにパス捕球後にファンブルしたボールが関学大のエンドゾーンに入り、それをWR大野慎也(四年)が抑えて勝ち越し。LB志賀隆蔵(四年、主将)を中心とした守備陣も踏ん張り、28-21で勝利した。前年の甲子園ボウルでの関学大戦の大敗から見事に立ち直った。
雨中の対戦で、関学大は慣れないゴムボールから革ボールに戻し、スパイクのポイントを変えるなど対策し、獲得距離、ボール所有時間、シリーズ更新回数とすべて法大を上回ったが、計3回のターンオーバーが響いた。逆に、関東大学リーグ戦の半分を雨で戦った法大が、この雨の甲子園ボウルを制した。ミルズ杯は法大のQB井川宅朗(四年)が受賞した。
◆第14回日本社会人選手権・東京スーパーボウル
●「第14回日本社会人選手権・東京スーパーボウル」は12月18日、東京ドームに25,000人の観客を集め、アサヒ飲料と松下電工が対戦。東京スーパーボウル史上初のウエストディビジョン所属チーム同士の顔合わせとなった。
アサヒ飲料は2Q12分までにK橋本紀郎の2つのFG、RB中島友哉の1ヤードTDラン、RB吉田昌弘の69ヤードのパントリターンTDで20-0と大きくリード。しかし、松下電工は前半終了間際のFGから、後半はパスとランの各TDで追い上げ、4Q12分に2点差に詰め寄った。しかし、残り2分余りでオンサイドキックを失敗し、逆転できなかった。
アサヒ飲料はウエストディビジョンでの対戦で、松下電工に残り1秒で逆転負けを喫していたが、その雪辱を果たした。MVPはアサヒ飲料のRB中村多聞が受賞。ハーフタイムショーはXリーグ各チームのチアリーダー総勢200人によるパフォーマンスで観客を魅了した。
◆第54回ライスボウル
●「第54回ライスボウル」は翌2001年1月3日、東京ドームに30,000人の観客を集め、アサヒ飲料と法大が対戦した。
アサヒ飲料が堅い守りで法大のミスを誘い、エースRB中村多聞を中心としたランプレーで7TDを奪う猛攻。第38回大会で日大が記録した大会最多得点53点に迫る52点を挙げ、52-13で初優勝し、21世紀最初の王者となった。
アサヒ飲料は1Q5分、QB桂雄史郎からRB中島友哉への6ヤードTDパスで先制。2Qにも中島の2つのTDランと、桂からWR西岡琢治への28ヤードTDパスで前半で28-0と大きくリードし、大勢を決めた。
法大も健闘し、パス獲得203ヤードはアサヒ飲料の147ヤードを上回った。しかし、パントのミスやファンブル1回、インターセプト3回の攻撃権喪失が大きく響いた。MVPのポール・ラッシュ杯は、22回のランで138ヤード、3TDを獲得したアサヒ飲料のRB中村多聞が受賞。社会人は5連勝で、通算成績を社会人の10勝8敗とした。
◆その他のボウルゲーム
●前年までジュニア・オールスターゲームとして開催されてきた関東・関西の2部、3部相当の選抜戦は、この年から「バーシティーボウル」と名称を変更。12月24日に長居球技場で「第11回東西カレッジフットボール、バーシティーボウル」を開催した。2部相当の関東2部と関西Div.2は、関西がQB多田浩之(京産大四年)のパス、DB酒井新司(摂南大四年)のインターセプトリターンTDで序盤に勢いに乗り、28-17で勝利。3部相当の関東エリアリーグと関西Div.3は、関東がK久保塚直樹(東京外大四年)の2つのFG、QB工藤謙一(東京外大四年)の2つのTDパスなどで20-6で勝利した。
[6]高校フットボールの活動
◆春季大会(高校)
●「第26回春季関東高校選手権」は準決勝で駒場学園高(東京1位)を29-27で破った日大三高(東京4位)と、法政二高(神奈川1位)と16-16の同点からのコイントスで決勝進出となった日大鶴ヶ丘高(東京1位)が決勝で対戦し、日大三高が33-14で勝って優勝した。
●「第30回春季関西高校選手権」は準決勝で関学高(兵庫1位)を21-0で破った大産大付高(大阪3位)と、県立星陵高(兵庫2位)を65-0で下した府立豊中高(大阪1位)が決勝で対戦し、大産大付高が77-20で大勝して2年ぶり3度目の優勝を遂げた。
◆秋季大会(高校)
■関東地区(高校)
●「全国高校選手権関東大会」決勝は11月19日、大井第二球技場で法政二高と日大鶴ヶ丘高の間で行われ、前半は7-7の同点で折り返した。3Q、法政二高が先行したが日大鶴ヶ丘高が追い付く展開が2回あったが、最後は4Q残り1分で法政二高がTDランで28-21と接戦を制した。
■関西地区(高校)
●「全国高校選手権関西大会」決勝は11月23日、西宮球技場で大産大付高と関西大倉高の大阪勢が対戦。開始早々、大産大付高は最初のシリーズで先制点を挙げ、2Qに2TDを加えて前半で22-3とリード。関西大倉高も総獲得距離で大産大付高を上回る攻撃で追い上げるが、大産大付高が36-24で逃げ切り、2年連続5回目のクリスマスボウル出場を遂げた。
◆第31回全国高校選手権決勝・クリスマスボウル
●「第31回クリスマスボウル」は12月23日、長居球技場で前年の覇者・大産大付高と5年ぶり出場の法政二高が対戦。大産大付高は開始のキックオフリターンで木下典明(三年)が80ヤードのTDを挙げ、続く法政二高の3回の攻撃シリーズをすべてターンオーバーからの攻撃でTDに結び付けるなど圧倒。64-0で2年連続3回目の高校王座に就いた。
●関東地区では、これまでのオールスター戦を改称し、新たに「STICKボウル」とした(「STICK」は加盟する埼玉、東京、茨城、千葉、神奈川それぞれの頭文字)。選抜の対象は高校三年生で、東京からA、Bの2チームを編成し、それぞれが神奈川の選抜チーム、埼玉・茨城・千葉の連合選抜チームと対戦する試合形式。第1回は翌2001年1月17日、等々力硬式野球場で行われ、選手らにとって高校時代を締めくくる最後の試合となった。
[7]フットボール・ファミリーの活動
◆フラッグフットボール
●12月18日、「日本フラッグフットボール連盟」(笹田英次理事長)が設立された。全国を8つの地区に分け、それぞれが現在の日本協会の各地区組織と密接な関係を持って構成された。事業としては、学校体育・地域社会への啓発活動、オープントーナメント・選手権の企画と実施運営、競技者の育成などだった。設立後、最初の行事として翌2001年1月3日の「第54回ライスボウル」時に「第1回フラッグフットボール日本ジュニア選手権」を開催した。
[8]海外・国際関連の活動
◆日本チームの活動(国内開催)
●立命大は、立命館創始130周年・学園100周年事業として、5月17日に西京極陸上競技場にカナダのブリティッシュコロンビア大を招いてアメリカンフットボールの試合を開催。サイズとパワーで一回り勝る相手に14点を先行されたが、QB宮崎裕樹(四年)のパスやDE山中正喜(三年)らの堅実な守備で逆転し、23-17で勝利した。
◆日本チームの活動(海外開催)
●アサヒ飲料は春に米国遠征を行い、6月4日にオレゴン州ポートアイランドでNFA(National Football Alliance)所属のコロンビア・クーガースと対戦し、33-30で勝利した。
●NFLが主催し、世界8か国の代表が参加する「第1回フラッグフットボール世界選手権」が8月19、20日にカナダのトロントで開催。日本協会では5月から6月にかけて全国8地区で大会を開き、各地区の代表チームよる「第1回NFLフラッグ日本大会」を7月16日に大阪・舞洲スポーツアイランドで開催。優勝した舞洲オリンポスJr(関西代表)が日本代表として出場した。
世界選手権では2つに分けた予選グループで、舞浜オリンポスJrはメキシコ、カナダ、ドイツを破り全勝。4チームによる決勝トーナメントの準決勝で、韓国を破って決勝に進み、豪州との決勝では前半大きくリードしたが、後半残り1分で逆転され、26-27で準優勝となった。
●1999年開催のワールドカップに続き、16歳から19歳以下(U19=大学一、二年生相当まで)を対象とした若手フットボーラーの世界大会への日本からの参加が始まった。大会は米国企業が主催し、既に97年から開催していた(第1回大会はメキシコと欧州の2チームが対戦)。この年第5回大会で、名称は「第5回グローバル・ジュニア・チャンピオンシップ」だった。
大会は米フロリダ州タンパにあるクリアウォーター高のスタジアムを使用し、米国、カナダ、欧州選抜、そして初参加の日本が出場した。日本は関東大学リーグに所属する大学一、二年生を対象に選考された39選手で編成し、ヘッドコーチは立大の阿部重一監督が務めた(「日本代表」の名称使用も日本協会で承認)。カナダは東部ケベック州を中心とし、米国はフロリダ州の24校から、欧州選抜はドイツを中心に英国、フランス、ロシアなど12か国からの選抜チームだった。
日本は1回戦(準決勝)でカナダと対戦し、前半は守備陣が奮闘して2-6で折り返したが、後半は体力に勝るカナダに失点を重ね、8-27で敗れた。続く3位決定戦で欧州選抜と対戦し、2Qで相手のパスをインターセプトしてTDを挙げると、後半もサイズの大きな欧州選手に対して的確なタックルで攻撃を封じ、14-7で勝利して銅メダルを獲得した。
海外勢とのU19相当での対戦は、関西の高校とアシュランド高の対戦しかない頃であり、日本の力がどの程度通用するのか心配され、また海外チームとは初対戦の選手が多かったが、日本は果敢な守備で欧米のチームに対抗できることを実証した。日本の選手らは現地で米国ボランティア宅にホームステイし、試合以外でも貴重な経験を積んだ。
●1999年に発足した米国女子フットボールリーグ(WPFL:Woman Professional Football League)に、日本から鈴木弘子がトライアウトに合格し、デイトナビーチ・バラクーダーズに入団。日本人女性で初の米国プロ選手となり、Cで活躍した。鈴木は第一生命レディコングでフットボールを始め、97年から99年に主将を務めていた。
●NFLヨーロッパには日本から5選手が参加した。4年連続となるLB河口正史(立命大OB、アムステルダム・アドミラルズ)、WR板井征人(鹿島、同)、TE安部奈知(リクルート、スコティッシュ・クレイモアーズ)のベテラン陣に、初参加のQB須永恭通(オンワード、同)、CB里見恒平(立命大OB、アムステルダム・アドミラルズ)。板井はライン戦で5捕球で週間最優秀選手に選出され、9戦目のベルリン戦では日本人初のTDレシーブを記録。里見は第2戦で完璧なマンカバーでチームの勝利に貢献し、河口、安部、須永もそれぞれ活躍した。
◆外国チーム間の試合(日本国内開催)
●2年ぶり10回目となる「アメリカンボウル」は8月6日、東京ドームでアトランタ・ファルコンズと2度目出場のダラス・カウボーイズが対戦し、ファルコンズが20-9で勝利した。前回同様、日本人選手の安部奈知、板井征人、河口正史が両チームに加わって出場した。