春の日大-関学大定期戦で、日大選手による危険タックルの問題が発生し、社会的にも大きな関心事となった。日大は所属する関東学生連盟から指導者の除名、秋のシーズンの出場資格停止などの処分を受けた。フットボール界全体で安全な試合運営について再検討することとなった。「日本アメリカンフットボールの殿堂」に第4回の顕彰者として11人を顕彰し、式典を開催した。
2018.01.01
お知らせ
危険タックル問題が発生。各組織で活動指針が見直され、クリーンな競技活動を宣言
日 付 | 主な出来事 | |
社 会 | 4月1日 | 日本体育協会が日本スポーツ協会へ |
6月12日 | 米国と北朝鮮が史上初の首脳会談 | |
6月28日 | 平成30年7月豪雨(西日本豪雨) | |
6月 | 国民体育大会を2023年に「国民スポーツ大会」に改称することが決定 | |
9月8日 | 大坂なおみ選手、全米オープンテニスで初優勝 | |
フットボール | 1月3日 | 藤本武氏ら10人、「日本アメリカンフットボールの殿堂」入り(第4回殿堂顕彰) |
3月 | 日本協会特別講習会「安全なフットボールの最新指導について」(仙台、大阪、東京) | |
5月6日 | 日大-関学大定期戦で危険なタックルプレー発生 | |
5月14日 | 日本協会「危険プレーの防止の徹底」発表、26日「フェアプレー宣言」発出 | |
6月14~24日 | FISU第3回世界大学選手権、日本3位(中国・ハルビン) | |
7月14~22日 | IFAF第5回U19世界選手権大会、日本5位(メキシコ市) | |
翌年1月3日 | 第72回ライスボウル、富士通、関学大を下し4回目の優勝 | |
翌年1月18日 | 第10回インターナショナルボウル、日本高校選抜-米U17選抜、日本惜敗 |
春の日大-関学大定期戦で、日大選手による危険タックルの問題が発生し、社会的にも大きな関心事となった。日大は所属する関東学生連盟から指導者の除名、秋のシーズンの出場資格停止などの処分を受けた。フットボール界全体で安全な試合運営について再検討することとなった。「日本アメリカンフットボールの殿堂」に第4回の顕彰者として11人を顕彰し、式典を開催した。
[1]主な出来事
●山梨県清里の清泉寮内の「日本アメリカンフットボールの殿堂」に第4回顕彰として以下11人が選ばれ、殿堂入りした。通常は5年間隔で顕彰が行われていたが、この第4回はその中間年で「競技者として貢献した者」、特に学生時代しか競技できなかった時代に活躍した者を対象に選出された。これで殿堂顕彰は計36人に。新たな殿堂顕彰者11人に対し、翌2019年1月3日の第72回ライスボウルの際に顕彰式典を開催した。
氏 名 | 属 性 | 氏 名 | 属 性 |
藤本 武 | 競技者 | 鈴木 智之 | 競技者 |
井床 由夫 | 競技者 | 木谷 直行 | 競技者 |
チャック・ミルズ | 指導者 | 吉岡 龍一 | 指導者 |
高橋 治男 | 競技者 | 木村 洋 | 競技者 |
野村 正憲 | 競技者 | 横溝 裕利 | 競技者 |
徳永 義雄 | 競技者 |
●日本協会は選手の試合や練習時の安全対策向上の一環として、特別講習会「安全なフットボールの最新指導について(ヘッドアップタックリング・ブロッキング)」を3月18日に仙台で、同24日に大阪で、同25日に東京で開催した。USA FOOTBALLが推進するフットボールでの脳震盪や重篤事故を防ぐためのプログラムを、講義と実地研修を通じて伝えた。
●5月、日大-関学大の定期戦で日大選手による危険タックル問題が起き、フットボール界はもとより社会的にも大きな問題となった。日大が加盟する関東学生連盟は日大を秋の公式戦の出場資格停止とし、指導者に除名処分を下した。また、日本協会からは加盟組織や関係者に対して「危険なプレー防止の徹底」と「フェアプレー宣言」が発出された。各連盟やチームも、クリーンな競技活動実施の宣言を行うなど、フットボール活動の目的や意義の確認が広く行われた。
翌2019年1月9日、関東学生連盟は日大に対する処分を同年3月末までとすることを決定した。
[2]競技施設・装具・公式規則
◆公式規則
●5月に発生した危険タックル問題に関連し、各組織であらためて公式規則書の冒頭に掲げられている『フットボール綱領 THE FOOTBALL CODE』の確認がなされた。この綱領は、「前文、コーチの倫理、相手への話しかけ、審判員への話しかけ、ホールディング、スポーツマンシップ」からなり、1936年の日本の最初の公式規則書にも、その後若干の改定はなされたものの、掲載されていたものである。
【この年の日本の主な規則変更】
特になし
[3]春季試合
◆春のボウルゲーム
●第64回西日本社会人選手権
第64回西日本社会人選手権決勝・グリーンボウルは5月20日、王子スタジアムでパナソニックとアサヒ飲料が対戦。パナソニックは開始早々にRB牧田圭祐が、2QにWR木下統之がTDを挙げるなどし、28-7で5年連続20回目の優勝を果たした。
●第40回パールボウル
第40回パールボウルは6月28日、東京ドームでオービックとIBMが対戦。オービックがRB望月麻樹の先制TDで前半にリードを広げ、守ってはDLバイロン・ビーティーJrの早い出足からの7タックル1サックなどの活躍で、28-2で勝利した。
[4]秋季試合
◆秋季試合(学生)
■関東(学生)
●関東大学リーグ1部はアミノバイタルフィールド、富士通スタジアム川崎、横浜スタジアムを主会場として開催した。
●TOP8は前年優勝の日大が春の危険タックル問題で出場資格停止となり、7校でのリーグ戦となった。なお、日大は8月、新監督に立命大出身の橋詰功氏が就任することを決定した。
第1節で前年7位の明大が法大と対戦。試合は一進一退のランゲームとなり、法大が1点リードで迎えた終了3秒前、明大のK佐藤太希(四年)のFGが決まり、明大が16-14で劇的な逆転勝利を挙げた。明大の法大戦勝利は32年ぶり。第2節で立大が慶大を17-3で慶大を破り、慶大戦で28年ぶりの勝利とした。
明大に敗れた法大は、その後勝利を重ね、最終節で全勝の早大と対戦。前半、早大がQB柴崎哲平(三年)からWRブレナン翼(三年)へのTDパスとRB元山伊織(四年)のTDランを挙げれば、法大はQB小田賀優介(一年)からWR高津佐隼矢(四年)へのTDパスとK三宅俊介(四年)が2FGを成功し、早大が14-13でリード。早大は4Qにも元山のTDランなどで10点を挙げ、24-20で逃げ切って全勝優勝を遂げた。2位は明大。法大は4勝2敗で3位となった。
■関西(学生)
●関西学生リーグDiv.1はエキスポフラッシュフィールド、王子スタジアム、万博記念競技場などを主会場として開催した。
●関学大は第6節で前年4位の関大と対戦。関大は前節、立命大に10-28で敗れており、試合は関学大が有利と見られていた。が、3Qまで関大が12-9とリード。4Qに入って関学大がFGで追い付くが、関大はRB藤原裕貴の8ヤードTDランで19-12と再びリード。しかし、関学大は試合終了5秒前にQB奥野耕生(二年)がWR阿部拓朗(三年)に12ヤードTDパスを決めて、19-19の引き分けに持ち込んだ。
最終節は、全勝の立命大と5勝1分の関学大の対戦。関学大が1Q、RB山口祐介(四年)の52ヤード独走TDで先制すると、2QにもQB奥野からWR阿部拓朗(三年)への19ヤードTDパスが通り、前半を14-0で折り返した。立命大は3Q、QB荒木優也(三年)からTE木村和喜(二年)への35ヤードTDパスで7点を返したが、関学大は4Qに1FG、2TDで突き放し、31-7で快勝した。
関西学生リーグの最優秀選手(松葉杯)には関学大のQB奥野が選ばれた。連覇を逃した立命大は2位。上位2校を関学大と立命大が占めるのは8年連続となった。
関大は最終節で京大に敗れ、4勝2敗1分で3位。4位には3年ぶりに1部に復帰した近大が入った。
■各地区の活動/代表決定戦(学生)
【北海道】 北海学園大が12年ぶりに復活し、全勝で6回目の優勝を飾った。
【東北】 孤高の躍進を続ける東北大が4戦全勝で7連覇を果たした。
【東海】 名城大と前年優勝の名古屋大が最終戦で全勝対決。名城大が14-10で逆転勝ちを収め、7連覇を逃した前年の雪辱を遂げた。
【北陸】 金沢大が最終節を待たずに優勝を決め、2連覇を遂げた。
【中四国】 高知大が躍進し、決勝で愛媛大を17-7で破って初優勝を果たした。
【九州】 西南学院大が九州リーグ初の快挙となる5連覇を達成した。
●全日本大学選手権の東日本代表校決定戦準決勝は第31回パインボウルとして行われ、東北大が初出場の北海学園大を38-14で破った。
●東日本代表校決定戦は早大が東北大を55-14で破った。
●西日本代表校決定トーナメントは、1回戦で高知大に勝利した金沢大を2回戦で西南学院大が破り、3回戦で西南学院大を破った名城大が立命大と対戦し、立命大が37-0で勝利した。
●西日本代表校決定戦は立命大と関学大が対戦。立命大は3インターセプトなどで19-17とリードしたが、関学大は最終プレーでK安藤亘祐(三年)が24ヤードのFGを決めて20-19で劇的な逆転勝利を収めた。
◆秋季試合(社会人)
■Xリーグ・第1、2ステージ(社会人)
●スーパー9、バトル9とも9チームによるリーグ戦を開催。この年の成績で次年度再編されるリーグの所属が決まることもあり、し烈な戦いが展開された。
レギュラーシーズンとトーナメントのワイルドカードを経て、準々決勝が行われた。オービック-ノジマ相模原はオービックが42-25で、富士通-オール三菱は富士通が前半から5シリーズ連続で得点するなどして35-7でそれぞれ勝利。IBM-エレコム神戸はIBMが34-23で、パナソニック-東京ガスはパナソニックが45-0で勝利した。
■プレーオフ(社会人)
●準決勝は富士通-オービック、IBM-パナソニックの顔合わせ。富士通-オービックはレギュラーシーズンでは点の取り合いとなったが、この試合は前半を0-0で折り返した。3Q、オービックがK星野貴俊のFGで先制したが、富士通は4Q、QBマイケル・バードソンの4ヤードTDランと、RBトラショーン・ニクソンの22ヤードTDランでリードを奪い、富士通が13-10で接戦を制した。
IBM-パナソニックは前半をパナソニックが7-3でリードして折り返した。IBMは3Q、QB政本悠起の好リードで逆転し、さらにTEジョン・スタントンへのTDパスやDB神津大地のファンブルリターンTDなどで24-17で勝利した。
[5]秋季試合(ボウルゲーム)
◆第73回甲子園ボウル
●全日本大学選手権決勝、第73回甲子園ボウルは12月16日、甲子園球場で関学大と早大が対戦し、関学大が37-20で勝利し、2年ぶり29回目の優勝を果たした。立ち上がりの攻撃で互いにTDを決める滑り出しとなったが、以降は関学大が支配する展開。1Q、関学大はDB西原光平(四年)のパントブロックでゴール前で攻撃権を得ると、QB光藤航哉(四年)がランでTDを挙げて、一気に流れを持ってきた。
前半は関学大が27-7でリード。早大は後半、WR遠藤健史(四年)の2つのTDパス捕球で反撃したが、前半の差を縮めることはできなかった。関学大のQB奥野耕世(二年)はパスで15回投げて12回成功し、149ヤードを獲得。ミルズ杯と甲子園ボウルMVPをダブル受賞した。
◆第32回日本社会人選手権・ジャパンXボウル
●第32回日本社会人選手権・ジャパンXボウルは12月17日、東京ドームに25,457人の観客を集め、前年と同じく富士通とIBMが対戦した。
1Q、富士通はIBMにFGで先制を許したが、その2プレー後にRBトラショーン・ニクソンの67ヤード独走のTDで逆転し、前半を21-9でリードした。富士通は後半も得点を重ね35-18で3年連続4回目の優勝を果たした。3連覇は2010年から4連覇したオービック以来2チーム目。MVPはラン17回で196ヤード、3TDを獲得したニクソンが受賞した。
◆第72回ライスボウル
●「第72回ライスボウル」は翌2019年1月3日、東京ドームに31,041人の観客を集め、富士通と関学大が対戦した。
両チームの対戦は2年ぶり3回目。富士通は開始早々、エースのRBトラショーン・ニクソンに7プレー中6プレーでボールを持たせてTDを挙げて先制。その後も得点を重ねて52-17で勝利し、社会人の連勝を10に伸ばした。35点差の勝利は大会史上3番目。MVPのポール・ラッシュ杯はジャパンXボウルのMVPに続いてニクソンが受賞した。関学大もパスを効果的に活用し、パスで富士通の2倍近い257ヤードを獲得したが、守備が富士通の攻撃を止めることができなかった。
[6]高校フットボールの活動
◆秋季大会(高校)
■関東地区(高校)
●「全国高校選手権関東大会決勝」は11月23日、晴天の駒沢第二球技場で慶応高(神奈川1位)と佼成学園高(東京1位)が対戦。慶応高が1Q、K池末大晟(三年)の19ヤードFGで先制したが、佼成学園高はQB山﨑誠太郎(三年)の5ヤードTDランで逆転。その後も得点を重ねて25-3で3年連続優勝を遂げた。
■関西地区(高校)
●「全国高校選手権関西大会決勝」は11月23日、王子スタジアムで箕面自由学園高(大阪1位)と立命館宇治高(京都1位)が対戦。立命館宇治高は1Q、RB横川豪士(三年)の3ヤードTDランで先制。箕面自由学園高はQB糸川幹人(三年)の9ヤードTDランで同点としたが、立命館宇治高は2QにK伊藤龍馬(一年)が2FGを追加。その後もリードを守り、18-13で勝利し、5年ぶりのクリスマスボウル進出を決めた。
◆第49回全国高校選手権決勝・クリスマスボウル
●「第49回クリスマスボウル」は12月24日、ヤンマーフィールド長居で立命館宇治高(京都1位)と佼成学園高(東京1位)が対戦した。
1Q、立命館宇治高がアンバランス体型で攻め、QB庭山大空(二年)のランで瞬く間に3TDを挙げ、21-0と大きくリードした。佼成学園高は2Q、RB森川竜偉(三年)の1ヤードTDラン、TE北川大智(一年)への4ヤードTDパスで反撃。前半を立命館宇治高が24-14とリードして折り返した。
3Q、立命館宇治高がTDなどで33-14と再び大きくリードしたが、4Qに佼成学園高が猛攻。WR高野一馬(三年)とRB森川竜偉(三年)のTDで迫ると、続く守備でDL今熊力丸(二年)がQBサックし、こぼれたボールをLB寺田暉(三年、主将)がリカバー。これで得た攻撃をRB森川の8ヤードTDランにつなげ、33-33の同点とした。さらに、直後の守備でRBと兼務のLB森川がファンブルフォースし、DB野村馨(三年)が拾い上げてエンドゾーンに駆け込んでTD。佼成学園高が39-33で勝利し、史上4校目の3連覇を遂げた。
[7]フットボール・ファミリーの活動
◆小・中学生フットボール
●第6回日本中学生選手権は前年に続き出場の関西代表の啓明学院中セインツが初出場のジュニアシーガルズを26-12で破り、初優勝した。
[8]海外・国際関連の活動
◆日本チームの活動(海外開催)
●「第10回インターナショナルボウル」は翌2019年1月、米テキサス州アーリントンで開催。日本高校選抜は米国のU17(17歳以下)代表と対戦し、三転の末に24-28で惜敗した。
日本は17-21で迎えた4Q、第4ダウンでパンターに入ったQB宇野瑛祐(立命館守山高二年)が走ってダウンを更新。最後はRB森川竜偉(佼成学園高三年)の19ヤードTDランで逆転した。しかし、残り3分で米国に51ヤードTDランを許して24-28で敗戦。敗れたとはいえ、U17米国代表と最後まで競り合い、大健闘したと言えた。
●国際大学スポーツ連盟(FISU)が主催する第3回世界大学選手権は6月、中国・ハルビンで行われ、米国、メキシコ、日本、韓国、中国が参加した。日本は韓国と中国に大差で勝利したが、準優勝の米国に3-42で、優勝したメキシコに3-39で敗れ、3位となった。メキシコは3連覇を達成した。
●国際アメリカンフットボール連盟(IFAF)が主催した第5回U19世界選手権は7月14日から22日にかけてメキシコ市で開催。カナダ、米国、メキシコ、豪州、スウェーデン、日本の6か国が参加した。
日本は初戦でメキシコに14-31で敗戦。2戦目は前回優勝のカナダに残り2分で6点差に迫ったが、22-28で敗戦。5位決定戦では豪州に51-14で勝利した。優勝はカナダで、以下メキシコ、米国、スウェーデン、日本、豪州だった。